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ラップトップを抱えた石器人

13行目にリスクの認識に何か問題があるとありますが、どのような問題があるのか教えてください。

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1999年に起きた東海村ウラン燃料加工施設における臨界事故は信じられない事故だった。安全確保のためのマニュアルが長い間にわたって少しずつ簡略化されていたのである。2002年から2003年にかけては、原子力発電所において、安全手続きの無視、トラブル隠しなどがいくつも発覚した。こんな管理では、いくつか大きな事故が起こってもおかしくはない。
2003年2月1日には、アメリカのスペースシャトル・コロンビアが大気圏再突入の際に分解し、七人の宇宙飛行士が亡くなった。事故の最終報告書によれば、1992年ごろから危険だといわれていた断熱材の破損が関係していたらしい。疑問はあったが改善の名案はなく、これまでうまくいったということから、NASAはその危険性を問題にしなかったらしい。
リスクの認識に何か問題があるようだ。車が行き交う道路を渡ろうとするときにどのくらいの危険があるかの判断は、まだ容易である。体の動きがどんなものか、それを自分でどれほど制御できるか想像がつく。判断を誤ったときにどんな災難が降りかかるかも、想像がつく。そして、それは皆、自分一人で行うことだ。
しかし、十分危険だが微量の放射能の存在は、人間の感覚器官には関知されない。巨大な打ち上げ装置から宇宙に射出されるような乗り物に生じうる事故も、通常の意味での直感的把握を超えている。理論的なリスクの査定はできても、感覚的には実感できない。しかも、原子力発電所も、NASAも、一人一人は巨大な作業のほんの一部を担っているだけであって、自分自身の判断のミスがどれほど最終産物の危険に貢献するのかは、これまた実感できない。

現代文 ラップトップ抱えた石器人 長谷川眞理子

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