基礎から説明するので解説が長くなります。すいません。
では、まず、電離度の意味から。
電離度とは、どれくらいが電離するかを表したものです。
たとえば、電解質が10個あって、電離度が0.90なら、電解質10個のうち10×0.90=9個が
電離するということ。すなわち、電解質10個のうち1個はそのまま存在する、ということ(画像参照)。
たとえば、電解質が200個あって、電離度が0.01なら、電解質200個のうち200×0.01=2個が
電離するということ。すなわち、電解質200個のうち198個はそのまま存在する、ということ。
たとえば、電解質が1molあって、電離度が0.05なら、電解質1molのうち1mol×0.05=0.05molが電離するということ。すなわち、電解質1molのうち0.95molはそのまま存在する、ということ。
では、理解を深めるために問題を解いていきます。
(1)0.10molの酢酸を溶かしました。
この水溶液中に水素イオン、酢酸イオン、酢酸分子はそれぞれ何mol存在しますか?
ただし、酢酸の電離度は0.0052とする。
酢酸の電離式はCH₃COOH⇆CHCOO⁻+H⁺になりますよね。
すなわち、電離式の係数の関係より、1molの酢酸が電離すると1molの酢酸イオンと1molの水素イオンが発生することがわかります。
※(電離式が書けなくても、)酢酸が1価の酸だと覚えている場合は、
少なくとも1molの酢酸が電離すると(1molの酢酸イオンと)
1molの水素イオンが発生することがわかりますよね。
今回は、何molの酢酸が電離しますか?
0.10molの酢酸の電離度は0.0052であるから、0.10×0.0052=0.00052=5.2×10⁻⁴molの酢酸が電離することがわかります。1molの酢酸が電離すると1molの酢酸イオンと1molの水素イオンが発生するのだから、5.2×10⁻⁴molの酢酸が電離すると5.2×10⁻⁴molの酢酸イオンと5.2×10⁻⁴molの水素イオンが発生することがわかります。
また、0.10molの酢酸のうち5.2×10⁻⁴molの酢酸が電離するから、電離していない、すなわち、酢酸のままのものは、0.10mol-5.2×10⁻⁴mol=9.948×10⁻²=約9.9×10⁻²mol存在することがわかる。
(3)0.0010molの水酸化カルシウムを溶かしました。
この水溶液中に水酸化イオン、カルシウムイオン、水酸化カルシウム分子は
それぞれ何mol存在しますか?
ただし、水酸化カルシウムの電離度は1.0とする。
水酸化カルシウムの電離式はCa(OH)₂→Ca²⁺+2OH⁻のようになりますよね。
すなわち、電離式の係数の関係より、1molの水酸化カルシウムが電離すると1molのカルシウムイオンと2molの水酸化イオンが発生することがわかります。
※電離式が書けなくても、水酸化カルシウムが2価の塩基だと覚えている場合は、
1molの水酸化カルシウムが電離すると(2molのカルシウムイオンと)
2molの水酸化イオンが発生することがわかりますよね。
今回は、何molの水酸化カルシウムが電離しますか?
0.0010molの水酸化カルシウムの電離度は1.0であるから、0.0010×1.0=1.0×10⁻³molの水酸化カルシウムが電離することがわかります。1molの水酸化カルシウムが電離すると1molのカルシウムイオンと2molの水酸化イオンが発生するのだから、1.0×10⁻³molの水酸化カルシウムが電離すると1.0×10⁻³molのカルシウムイオンと2.0×10⁻³molの水酸化イオンが発生することがわかります。
(また、水酸化カルシウム0.0010molのうち0.0010molの水酸化カルシウムが電離するから、電離していない、すなわち、水酸化カルシウムのままのものは、存在しませんよ。)
分からなければ質問してください。
要は、水酸化イオンの量を聞かれても、水素イオンの時と同じで、
水酸化イオンの量=塩基の物質量×電離度×価数で求まります
では、なぜ、水素イオン濃度は、酸のモル濃度×電離度×価数で求まると言えるのか?
モル濃度とは、溶液1Lあたりに溶けている溶質の物質量molを表すものです。
例えば、
0.10mol/Lの酢酸水溶液の酢酸の電離度は0.010である。この時の水素イオン濃度を求めなさい。
酢酸の電離式の係数の関係、もしくは価数より、1molの酢酸が電離すると(1molの酢酸イオンと)1molの水素イオンが発生することがわかります。
今回は、何molの酢酸が電離しますか?
今回は、溶液1Lあたりに0.10molの酢酸が溶けており、酢酸の電離度は0.010であるから、溶液1Lあたり0.10×0.010=1.0×10⁻³molの酢酸が電離することがわかります。1molの酢酸が電離すると1molの酢酸イオンと1molの水素イオンが発生するのだから、1.0×10⁻³molの酢酸が電離すると1.0×10⁻³molの酢酸イオンと1.0×10⁻³molの水素イオンが発生することがわかります。
以上より、0.10mol/Lの酢酸水溶液1Lには、少なくとも1.0×10⁻³molの水素イオンと1.0×10⁻³molの酢酸イオンが存在します(電離していない酢酸分子も存在しますよ)
すなわち、溶液1Lに水素イオンは1.0×10⁻³mol溶けているから、
水素イオンのモル濃度は1.0×10⁻³mol/Lになります。
ちなみに、酢酸イオンのモル濃度も1.0×10⁻³mol/Lになりますよ。
続く
例えば、
0.0010mol/Lの硫酸水溶液の酢酸の電離度は1.0である。この時の水素イオン濃度を求めなさい。
硫酸の電離式の係数の関係、もしくは価数より、1molの硫酸が電離すると(1molの硫酸イオンと)2molの水素イオンが発生することがわかります。
今回は、何molの硫酸が電離しますか?
今回は、溶液1Lあたりに0.0010molの硫酸が溶けており、硫酸の電離度は1.0であるから、溶液1Lあたり0.0010×1.0=1.0×10⁻³molの硫酸が電離することがわかります。1molの硫酸が電離すると1molの硫酸イオンと2molの水素イオンが発生するのだから、1.0×10⁻³molの硫酸が電離すると1.0×10⁻³molの硫酸イオンと2.0×10⁻³molの水素イオンが発生することがわかります。
以上より、0.0010mol/Lの硫酸水溶液1Lには、2.0×10⁻³molの水素イオンと1.0×10⁻³molの硫酸イオンが存在します(電離していない硫酸分子は存在しませんよ)
すなわち、溶液1Lに水素イオンは2.0×10⁻³mol溶けているから、
水素イオンのモル濃度は2.0×10⁻³mol/Lになります。
ちなみに、硫酸イオンのモル濃度は1.0×10⁻³mol/Lになりますよ。
続く
まとめると、
電離度とはどれくらい電離するか
モル濃度とは溶液1Lあたりに溶けている溶質の物質量mol
1価の酸とは、1molの酸が電離すると1molの水素イオンが生じる、という意味
2価の酸とは、1molの酸が電離すると2molの水素イオンが生じる、という意味
3価の酸とは、1molの酸が電離すると3molの水素イオンが生じる、という意味
だから、存在する水素イオンのモル濃度は、酸のモル濃度×電離度×価数で求まります。
酸のモル濃度×電離度で、
与えられた酸の水溶液1Lに含まれる酸のうち何molの酸が電離するかを表し、
(溶液1L中で電離する酸は何molかを求めている)
価数をかけることで、電離した結果、溶液1L中で何molの水素イオンが生じるかを表して
います。すなわち、水素イオンのモル濃度を求めています。
これは、水酸化イオンのモル濃度を聞かれても同じです。
水酸化イオンのモル濃度=塩基のモル濃度×電離度×価数、です。
分からなければ質問してください
この考え方はpHに繋がります
(2)0.0010molの硫酸を溶かしました。
この水溶液中に水素イオン、硫酸イオン、硫酸分子はそれぞれ何mol存在しますか?
ただし、硫酸の電離度は1.0とする。
硫酸の電離式はH₂SO₄→2H⁺+SO₄²⁻のようになりますよね。
すなわち、電離式の係数の関係より、1molの硫酸が電離すると1molの硫酸イオンと2molの水素イオンが発生することがわかります。
※(電離式が書けなくても、)硫酸が2価の酸だと覚えている場合は、
少なくとも1molの硫酸が電離すると(1molの硫酸イオンと)
2molの水素イオンが発生することがわかりますよね。
今回は、何molの硫酸が電離しますか?
0.0010molの硫酸の電離度は1.0であるから、0.0010×1.0=1.0×10⁻³molの硫酸が電離することがわかります。1molの硫酸が電離すると1molの硫酸イオンと2molの水素イオンが発生するのだから、1.0×10⁻³molの硫酸が電離すると1.0×10⁻³molの硫酸イオンと2.0×10⁻³molの水素イオンが発生することがわかります。
(また、硫酸0.0010molのうち0.0010molの硫酸が電離するから、電離していない、すなわち、硫酸分子のままのものは、存在しませんよ。)
まとめると、
電離度とはどれくらい電離するか
1価の酸とは、1molの酸が電離すると1molの水素イオンが生じる、という意味
2価の酸とは、1molの酸が電離すると2molの水素イオンが生じる、という意味
3価の酸とは、1molの酸が電離すると3molの水素イオンが生じる、という意味
だから、存在する水素イオンの量は、酸の物質量×電離度×価数で求まります。
酸の物質量×電離度で与えられた酸のうち何molが電離するかを表し、
価数をかけることで、電離した結果、何molの水素イオンが生じるかを表しています
これは、水酸化イオンの量を聞かれても同じです。