入試問題演習 (脂肪族・芳香族 No.8)
解答時間:20分
奈良女子大学 2016 全3問75分
炭素 水素酸素からなる化合物 A~Dは同じ分子式を有し, ベンゼン環を1つもつエステルである。
以下の文章 (1)~(5)を読んで問1~7 に答えよ。 必要があれば次の原子量を用いよ。
3
H=1, C=12,0=16
(1) 1 エステルAを2.05mgとり, 酸素気流中で完全燃焼させたところ、 二酸化炭素 5.50mgと水 1.35mg
が得られた。
(2)エステルAに希塩酸を加えて加熱し, 加水分解を行った。 反応液が冷えてから,エーテルで数回抽出
した。 エーテル層を合わせ、穏やかに加熱してエーテルを注意深く蒸発させると, 1価のカルボン酸Eと
エタノールが得られた。 ② 純粋なEを816mgとり, 水に溶解した後に0.10mol/Lの水酸化ナトリウム水
溶液で滴定すると, 中和するまでに60mL を必要とした。 E を過マンガン酸カリウムで酸化すると化合物
Fが得られ,F を加熱すると分子内で脱水反応が起こり, 化合物Gが得られた。
(3)エステルBに水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱し, 加水分解を行った。 反応液を冷やし,エーテ
ルで抽出すると,エーテル層から不斉炭素原子をもつ化合物Hが得られた。 ③Hに濃硫酸を加えて加熱す
ると脱水反応が進行して炭素-炭素二重結合が生成し, 3種類の異性体が得られた。
(4)エステルCに過剰の水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱した後, 反応液を冷やし, エーテルで抽出
を試みたが,エーテル層からは何も得られなかった。 そこで, 水層に二酸化炭素を十分に通じた後にエー
テルで抽出すると, エーテル層から化合物Iが得られた。 Iに塩化鉄(Ⅲ) 水溶液を加えると紫色に呈色
した。 Iに臭素を反応させたところ, 反応の初期段階で生成する, ベンゼン環に直接結合した水素原子が
1つだけ臭素原子に置き換わった化合物は1種類のみであり、 異性体は存在しなかった。 さらに反応を続
けると,Iのベンゼン環の水素原子はすべて臭素原子に置き換わり, 同じ置換基が隣り合わない構造を有
する6置換ベンゼン Jが得られた。 一方, ⑤水層に塩酸を加えて弱酸性にし, その一部を取ってアンモニ
ア性硝酸銀水溶液を加えると銀が析出した。
(5) エステルDに希塩酸を加えて加熱し, 加水分解を行った後,反応液を冷やしてからエーテルで抽出す
ると,エーテル層から不斉炭素原子をもつカルボン酸Kが得られた。
問1 下線部 ①の結果から, A の組成式を求めよ。 計算過程も示せ。
問2 下線部②の結果から,Eの分子量を求めよ。 計算過程も示せ。
問3 (1)および(2)の結果から, A の分子式を求めよ。 考え方も示せ。
問4 下線部 ③で得られた異性体の構造式をすべて示せ。
問5 下線部④の結果から, I が有する構造上の特徴を簡潔に説明せよ。
問6 下線部⑤で弱酸性にした水層に含まれる有機化合物の名称を答えよ。
問7 エステルA~Dの構造式を示せ。 また, 不斉炭素原子の右上に印をつけよ。