現代文
高校生
解決済み
分からないので教えてください
Q1. 筆者は, 106-107P で 「染める」 行為は自分にとっ
て, 季節を感じたり, 土や水との関わりであったりとい
う 【2】であると述べている。
入力しよう
うこととは決定的に違う。 単に自然の恵みを享受していることとも違う。 種をま
いて収穫することとも少し違う。 私はただ、邂逅を求めて山に足しげく通うこと
しかできない。
大学で染績を学んでいた頃、 化学染料に違和感を覚えたことが、植物染料との
出会いだった。 少量・短時間で、鮮やかな色を出せる魔法の粉は、確かに便利で
合理的だと思う。けれど自分が作る側に立ったとき、仕様どおりの分量と手順で
色見本と同じ、答えの分かりきった色を染めることよりも、 染め重ねて深みを増
していく色と向き合うことに夢中になった。もちろん、 環境問題や身体への影響
なども含めての違和感だったけれど、植物から引き出せる色の奥行きや可能性は、 D
さ
れた
私
それ
に大きな希望をくれた。
植物染料を使った草木染めは、
でも、都会の小 さなキッチンで の、袋詰め
これは
次第に新たな違和感を運んでくる。
いった
いどこから来て、どこへ行くのか。同じような疑問は、食のこと、 子育てのこと、
働き方のこと、お金のことなど、暮らしの中でいくつも浮かびあがり、都会での
暮らしは、あらゆる言葉への違和感が増えていくばかりだった。
岡山で暮らし始めるまで、 草木染めを仕事にしようとは思っていなかった。 夫
はフリーランスのデザイナーで、私は彼のウェブの仕事を手伝っていた。 暮らし
のこと 仕事のこと 子育てのこと。 どれをとっても東京にいる意味を見いだせ
なかった私たちは、長男の小学校入学に合わせた二〇一一年三月に、夫の故郷で
ある仙台へ移住することを決めた。 たんぼの真ん中に建つ築二百年の大きな家。
米や野菜を作りながら、自分たちの生業としてデザインや染織の仕事をする。 私
たちはそんな夢を描いていた。そして二〇一一年三月十一日。東日本大震災に
よって、移住を予定していた実家は津波で全壊。さまざまな葛藤の末、 西日本へ
にしあわくらそん
の移住を決断した。 岡山県北の西粟倉村。 二〇一一年八月、何の縁もない見知ら
ぬ土地での暮らしが始まった。 ほんの僅かな情報だけを頼りに、導かれるように
やってきた私たちは、山で暮らす準備など何もできていなかった。 当初予定して
いた仙台での田舎暮らしとは比べ物にならないほどの山間地。 厳しく豊かな自然。
淡々とこの土地に順応していく中で私たちにできるのは、震災と原発事故を経て
言葉でいっぱいになった頭を整理することだけだった。 多くのものをそぎ落とし、
した先に残ったもの。それは、続いていく日々の暮らしだった。
5
[1]
社会と関わる104
15 フリーランス 一定の
会社や団体などに所属
せず仕事に応じて自
由契約で働く人。
1東日本大震災 二〇一
一年三月十一日に発生
した、マグニチュード
九〇の巨大地震と津
波による大災害。
1西粟倉村 岡山県北東
の村。村域の大部分
は山地で林業が盛ん。
足しげく
か
房で染色する筆者
この場所に暮らし、
誘われるように色を染
める日々の中で、やっ
とたどり着いた答えが
ある。自然と関わり、
自然にかえっていく物
作りの中で、どんなに
手間や時間がかかって
も、その土地の〝環境"を持続できる〝技術"を残していきたいということ。
私自身が色を染め、物を作る日々の中で、自分の求める表現を可能にするため
の技術と、それを支える環境を受け継いでいくということだ。環境を変えてしま
うほどの巨大な技術が、大切に受け継がれてきた無数の小さな技術を淘汰して
しまう時代に、何を手放し、何を残していくのか。 「染める」行為は私にとって、
とうた
その先にある季節を感じることであり、背景である土や水との関わりであり、大
きな循環の一部だ。 それは染色のことだけでなく、日々の暮らしのあらゆる場面 B
で実感している。野菜を作ること、山の木をきって燃料にすること、 子供が川で
釣ってきた魚を家族で食べること。自然とじかにやりとりする中で、一つの行為
を自分の手の届く範囲で完結させ、循環させること。それを可能にする環境さえ
あれば、きっとそれは難しいことじゃない。どこから来て、どこへ行くのかを可
視化させることよりも、それを肌で感じられる環境こそが、私
には必要だったんだと思う。
草木の持つ色は美しい。私たちは今、草木染めの布を使って
服を作ることに取り組んでいる。 植物の色は化学染料と比べる
と不安定で、全体的に淡く落ち着いた色味になる。 日光による
退色や変色のぐあいも植物によってさまざまなので、商品にす
るには、どの植物でもよいというわけにはいかない。 下地や定
着を工夫したりして、時間をかけて染め重ねていく。市販され
ている合成の助剤などを使えば、複雑な模様の表現や鮮やかな
発色も可能だけれど、できるだけ自然の物、 中身が分かる物を
15
(106
ev
る
18助剤 主な作用をする
薬剤の働きを補強する
ために用いられる薬剤。
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ほんとにありがとうございます
助かりました😭💦