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大気の大循環が生じる理由は、地球が球体であり地軸が傾いているので、太陽からのエネルギーが平等に当たらず、赤道~低緯度地方、高緯度地方~極地方で気温差が生じてしまうからです。赤道、低緯度地方(インドネシアなど)は太陽放射が良く当たり熱くなりますが、高緯度(ロシアなど)~北極・南極などは太陽放射が当たりにくく、季節変化もあります。さらに地球は熱を宇宙空間へ常に逃がしているので、極地方のような所はより一層低温化しますが、赤道方面は逆に熱くなりすぎます。これを解消するために、大気の大循環によって地球全体の熱収支のバランスを取ろうというのです。
低緯度帯で赤道に向かって吹いてくる北東の風は「貿易風」または「偏東風」と呼ばれ、コロンブスやマゼランの時代に航海者たちが帆船を航行させるのによく使われていました。北半球の「北東貿易風」と南半球の程度帯から赤道に向かって吹く「南東貿易風」がぶつかる赤道付近は上昇流によって「赤道低圧帯」と呼ばれる雨域を作り出します。アマゾンの熱帯雨林は、この赤道低圧帯による暖かい雨によって育ち、光合成によって地球の酸素の大部分を作っているのです。
極地方にも北東に卓越する風があります。「極偏東風」と呼ばれますが、この風は偏西風とぶつかって北緯(または南緯)60°付近に「亜寒帯低圧帯」を形成します。ここは暴風雨が頻繁に起こる荒れた天気のエリア。
低緯度帯と中緯度帯の境目の所は、下降流が卓越するエリアで「亜熱帯高圧帯」と呼ばれる領域です。今現在、夏の猛暑をもたらしている太平洋高気圧は、この「亜熱帯高圧帯」で発生し、夏ごろに日本まで勢力を伸ばしてきます。
低緯度、中緯度、高緯度の循環にも名称があります。低緯度の循環は「ハドレー循環」、高緯度は「極循環」と呼ばれます。一応、中緯度にも「フェレル循環」と呼ばれる循環があるとされていますが、これは見かけ上の循環であまり意味がないです。フェレル循環と極循環を合わせて「ロスビー循環」といいます。いずれも発見した学者の名前です。
添付の画像に加筆・補足をしました。以上の説明と一緒に読んでください。
質問がございましたら、どうぞ。
補足。
中緯度帯は少し事情が異なります。先の説明で「フェレル循環」を紹介しましたが、これは地球の温度調整に役に立たない循環なのです。しかし放っておくと地球の温度調整に支障を来たします。そこで中緯度帯の温度調整を担うのが「偏西風」です。
日本を含む中緯度帯では、南北の気温差がある一定の限度を超えると偏西風が波動を起こして、南の暖かい空気と北の冷たい空気を入れ替えようとする働きがあります。例えば北海道で0℃、沖縄で20℃とした場合、この20℃分の気温差を解消しようとして偏西風が波打ち、偏西風が波打つことで発生するのが温帯低気圧や移動性高気圧なのです。
『一般気象学』という本に波打つ偏西風の行動が載っています。500~250hPaの高さで等圧線が波打っていて、偏西風はこの波打つ線に沿って西から東へ吹きます。その際、暖かい空気のある所では地上に"L"を示す低気圧が生じて上昇流があり、寒い空気のある所では"H"を示す高気圧が生じて下降流があるのです。このように、偏西風の蛇行は、特に中緯度帯においては日々の気温のバランスを取るために欠かせないものであり、温帯低気圧や移動性高気圧が発生することで、赤道や極地方に比べて体感的に過ごしやすい気候を作っているのです。