これは、パズルのような問題です。
どのくらい制限酵素について理解されているか分かりませんので、順に説明してみます。添付した図を見ながら読んで下さい。
とりあえず添付図Aを見て下さい。
制限酵素は、それぞれに決まったDNA配列を切断します。BamHIとHindIIIは違った配列を切断し、一方の鎖が少し突き出た切断面を作ります(突出末端と呼びます)。
こんどは逆に制限酵素で切ったDNA断片を繋ぐ時ですが、DNAの末端間でAとT、CとGがペアを作れなければ、繋ぐことが出来ません。ですので、突出末端を作る制限酵素を使った場合は、プラスミドと目的遺伝子の両方を同じ制限酵素で切る必要があります。BamHIで切った末端同士やHindIIIで切った末端同士を繋ぐことが出来ますが、BamHIで切った末端とHindIIIで切った末端を繋ぐことは出来ません。
次は少し応用になりますが、添付図Bを見て下さい。
制限酵素の中には平滑末端といって、上下同じ長さになるように平らに切る酵素があります。問題で出てきたEcoRVもその一つです。この場合はAとT、CとGがペアを作ることを考える必要は無いので、別の酵素で切って平滑になった切断面(添付図BではSmaI)と繋ぐことができます。
ただし、突出末端は一部の塩基が2本鎖になっていないので、そのままでは平滑末端と突出末端を繋ぐことは出来ません。
上のことを理解して問1を見ますと、目的の遺伝子の両端にBamHIで切れる箇所(BamHIサイトと呼びます)があり、ベクタープラスミド(大腸菌の中で増やすためのプラスミド)にもBamHIサイトがあるので、両方をBamHIで切断して繋ぎ合わせることが出来ます。
そして、もう一つ、目的遺伝子とベクタープラスミドの両方にEcoRVサイトがあります。すると、BamHIとEcoRVの混合液で切断すると、
BamHI-[目的の遺伝子]-EcoRV
と
ベクター]-BamHI EcoRV-[ベクター
ができ、BamHI断面どうし、EcoRV断面どうしが付いて両者を繋ぐことが出来ます。
HindIIIはベクタープラスミドを切ることは出来ますが、目的の遺伝子を切り出すには使えませんし、上で説明したように、BamHIの切断面とHindIIIの切断面を繋げることは出来ません。
よって、①と④が答えになります。
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次に問2ですが、問題文にあるように、このベクタープラスミドには2つの働きがあります。
・抗生物質Aに対する耐性をもたせる
・βガラクトシダーゼを発現し、物質Xがあると青く染める
ですが、目的の遺伝子が途中(BamHIやEcoRVサイト)に入ると、βガラクトシダーゼ遺伝子が壊れてしまうので、物質Xがあっても青く染まりません。
問いは「青いコロニーを形成した大腸菌について」ですので、
a:プラスミドが入っていないと抗生物質Aによって大腸菌は増えることが出来ないので、X
b: 正しい
c:βガラクトシダーゼ遺伝子が分断されていると物質Xがあっても青く染めることが出来ないので、X
d:耐性遺伝子が壊れていると、aと同様、増えることが出来ないので、X
e:正しい
f:正しい
まとめると、b,e,fの⑧が正解ではないでしょうか。
解説ありがとうございます。
読みながらもう一度考え直してみて、また何かあったら質問させていただきます。