それから、ぐうちゃんがまた僕の家に帰ってきたのは、九月の新学期が始まってしばら
くした頃だった。顔と手足が真っ黒になっていて、パンツ一つになると、どうしても笑い
たくなって困った。
残暑が厳しい日だった。久しぶりにぐうちゃんのほら話を聞きたいと思った。 またから
かわれてもいい。暑いから、今度は寒い国の話が聞きたい感じだ。
ところが、ぐうちゃんの話は、でっかい動物でも、暑い国のでも、寒い国の話でもな
かった。
「旅費がたまったから、これからまた外国をふらふらしてくるよ。」
ぐうちゃんは突然そう言った。「でもまあもう少し。」にはこんな意味があったのか。ぐ
うちゃんはいつもと変わらずに話を続けている。 それなのに、ぐうちゃんの声はどんどん
遠くなっていく。気がつくと、僕はぶっきらぼうに言っていた。
「勝手に行けばいいじゃないか。」
ぐうちゃんは、そのときちょっと驚いた表情をした。何かを話しかけようとするぐう
ちゃんを残して僕は部屋を出た。
それ以来、僕は二度とぐうちゃんの部屋には行かなかった。母は、そんな僕たちに、あ
きれたり慌てたりしていたけれど、父は何も言わなかった。
十月の初めに、ぐうちゃんは小さな旅支度をして「いそうろう」を卒業してしまった。
出発の日、僕は、何て言っていいのかわからないままぐうちゃんの前に立っていた。
ぐうちゃんは僕に近づき、あの表情で笑った。そして、何も言わずに僕の手を握りしめ、
力の籠もった強い握手をして、大股で僕の家を出ていった。
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20
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10
10
3
極端意
漢
端
はは
寂
極端
シ
寂しい
突 2
突然
コウ)
あわ
慌あわてる
慌てる
あわただしい
にぎ
屋 アク
にぎる
握りしめる
また
また
大股