これはハーシーとチェイスというアメリカ人が遺伝子の本体がDNAにあることを証明した実験ですね。
その背景には、その当時、遺伝子の本体は染色体上にあり、染色体はタンパク質とDNAで構成されているということまでは分かっていました。となると、遺伝子の本体はタンパク質かDNAのどちらかにあるわけですがお偉いさんたちは遺伝子の本体はタンパク質であると信じて疑いませんでした。なぜならば、タンパク質を構成するアミノ酸は20種類あり、DNAは4種類しかないため、人間の複雑な遺伝子をたった4種類の暗号で書けるはずがないという考えです。そのお偉いさんを論破するためにハーシーとチェイスがこの実験をしたということです。
この人たちは、大腸菌に感染するT2ファージ(以下ファージと言います)というウイルスを使って実験しました。
ファージは、タンパク質とDNAからなるウイルスです。2人は、まずファージを大腸菌に感染させました。
ファージが大腸菌に感染する手順を以下に示します。
①ファージが大腸菌にくっつく
②大腸菌の中に自分のDNAを注入する(タンパク質の抜け殻は大腸菌の表面にくっついたまま)
③大腸菌の中でDNAが複製されて増殖する
④増殖された遺伝情報をもとに大腸菌の中でファージがたくさんできる
⑤大腸菌の細胞膜を破ってファージが外に出ていく(溶菌)
ここで2人は、遠心分離機を使って感染した大腸菌(②)とファージの抜け殻(大腸菌に注入しているのでDNAはない)を分けました。大腸菌は重いので下に、ファージの抜け殻は軽いので上澄に行きます。
ここからがプリントの内容です。
この時2人は、普通のファージではなく、タンパク質に含まれる硫黄(S)から放射線が出るようにしたものと、DNAに含まれるリン(P)から放射線が出るようにしたものを用意しました。※硫黄(S)はDNAにはなく、リン(P)はタンパク質にはありません。
そうすると、大腸菌がある方の液からはリン(P)の放射線が検出され、タンパク質がある上澄の方からは硫黄(S)の放射線が検出されました。
ここから分かることは、大腸菌の中に入ったのはDNAで、タンパク質は大腸菌の中に入れないということです。つまり、タンパク質は大腸菌の中に入れないのだから遺伝子の本体であるはずがなくDNAこそが遺伝子の本体じゃろがい!ボケ!というわけです。
こうして無事お偉いさんを論破して、遺伝子の本体がDNAであると認められました。
すごく長くなってしまったので、わからないことがあったらコメントしてください。