現代文
高校生

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めぐむ 小説 典 「川べりの道」 鷺沢萠 川べりの長い道 吾郎は毎月同じ日にその家を訪ねるが、玄関の土間に女のひとの方が顔を出すことは滅多になかった。大抵 は父親が扉を開き、軒下の薄暗い電灯に照らされて所在なげに佇んでいる吾郎を見ると、「あン」とか「おう」と か短い声を出した。 父は吾郎に「上がれ」と顎で示すこともあるし、近くの児童公園まで吾郎を連れ出すことも ある。どうやら吾郎がその家に上がれるのは、女のひとの不在のときに限られるらしかった。 すわ しわ せんべい たず 吾郎を家にマネき入れることができる日は、父は吾郎を奥の茶の間に坐らせる。何もいらないと言っても、 父は台所からジュースやら煎餅やらを運んで来て吾郎の前に並べる。 そして顔中に深く皺を刻ませ、吾郎の顔 を見る。学校はどうだ、とか、吾郎の姉の時子は元気か、とか、成績はいいか、とか、父の訊ねることは毎月 決まっている。吾郎は畳の上で足をむずむず動かしながら、いちいち「うん」と頷く。 うなず 吾郎にしてみれば、女のひとが今帰って来るかと気が気ではない。早く帰りたくてAしてくる。 不思議に思うのは、あの川べりの長い道を歩いている間は、早く父に会いたくて、というより早くこの家に 着きたくて仕方がないというふうなのに、この家に着いた途端、早く帰りたいという気持ちでいっぱいになっ てしまうことである。早く役目を果たして、 そして来月までは自由の身だ。 そんな気持ちにさえなるので ある。茶の間の畳に坐った瞬間、時間が経つことだけを念じてしまう自分を、吾郎は奇妙に思う。 父の話に一段落つくと、吾郎は次に父が口を開く前に立ちあがる様子を見せて言う。 「じゃ、もうそろそろ….……..」 その一瞬に父の見せる表情を、吾郎は何とケイヨウしていいか判らない。口を少し開けたまま、父は空洞の ような目をする。それは残される者の不安とも、残る者の安心とも言える。鼻づらを突然はたかれたかのよう な顔をして、父は「そうだな」と不興そうな短い声を出す。 かまち 吾郎は玄関の上がり框に腰かけ、わざと時間をかけて靴のヒモを結ぶ。そうしている間に、父が後から封筒 を持ってバタバタとやって来る。 「それじゃあ」 そう言って吾郎が土間に立つと、父は精一杯さり気ないような声で言う。 その言葉は、父が唯一自分から示す父の感情である。 「忘れるとこだっ がこの家を訪ねるのは、決して 27 gri F13 さぎさわ JIzZzZzZz 5 語注 上がり框 玄関などの家の上がり口に 渡してある横木。 登場人物の心情が描かれた、 注目すべき部分に線を引 け。 また、それを参考にして、 あらましメモを完成させよ。 あらましメモ 心情をつかむ 父の訊ねることに、いちいち「う ん」と頷く。 女のひとが と気が気ではな い。 この家に着いた途端、早 という気持 ちでいっぱいになる。 「じゃ、俺もうそろそろ......」 父は る。残される者の 残る者の 「忘れるとこだった、コレ」 精一杯 うな声で言う。 吾郎がこの家を訪ねるのは、 封筒 のためだ けではないと自分に させているようでもあった。 ✓[ 66 小説 のような目をす とも、 とも言える。 9T
ってす を持ってバタバタ 「それじゃあ」 そう言って吾郎が土間に立つと、父は精一杯さり気ないような声で言うからやって来る。人間に群を 「忘れるとこだった、コレ」 5 その言葉は、父が唯一自分から示す父の感情である。 「忘れるとこだった」さり気なく言うことで、父は吾郎 がこの家を訪ねるのは、決してこの封筒のためだけではないのだ、ということを自分に納得させているようで 2 郎は曖昧な返事をして封筒を受け取ると、扉を開けて表へ出る。大仰に頭を下げて感謝することも、やれ と言われれば吾郎にはできる。 しかしそうすれば、父は情ないほどに悲しい顔をするであろう。吾郎はそれを 知っていた。かと言って無言のままぶっきらぼうに受け取ったのでは何か格好がつかない。それで吾郎は Bと口の中で不メイリョウなありがとうを言う。 「時子に、体に気をつけるようにってな」 吾郎の後姿に向かって父は声をかける。吾郎の姉の時子は、中学校に上がるころまですぐに風邪をひき、熱を出しては学校 を休んでいた。そのころの時子のイメージが、父にとっては強いのであろう。今の時子からは、そんなことは想像しにくい。 半ば振り返って父の言葉に頷き、軽く手を挙げると、あとは堪まらなくなって吾郎は駆け出す。いまいまし いほど愚鈍な緑色の三輛編成の電車が、すぐそばの踏切を轟音を立てて通り過ぎてゆく。 さんりょう ごうおん A Bに入る最も適当な言葉を、それぞ 問|漢字線① は読みを書け。 問 文脈 > のカタカナは漢字に直し、漢字 (16) れ次から選べ。 ア もじもじ ウもごもご ( 3 ×2) イ よろよろ うずうず 一線1 4の意味を、それぞれ選べ。 ア 退屈そうに イ 居場所がなく (3HEXN) ウ無気力に エ悲しそうに 4ア 見栄をはった 無関心な ウ 腹立たしげな エ面白くなさそうな 問 もあった。封筒の中には、吾郎と姉の時子の、ひと月分の生活費があるのだ。 ATU (2) 5 FIIMI ③ Iannouap xey EDTTR (3) (4) A 31 B させているようてもあ 「時子に、体に気をつけるように ってな」 なって吾 郎は駆け出す。 心情の変化 あらましメモの活用 ある物に吾郎の心情を投影して 表現しているのはどこか。 行目 あらましメモを用いた次の言葉を用いて、 百字要約 本文を要約せよ。 (女のひと生活費をもらう・さり気 なく) 問四内容 線2とあるが、「役目」とは何か。本文中 の言葉を用いて二十五字以内で書け。 (5点) 行目~
(5点) 問五 理由 本 線3のように吾郎が思うのはなぜか。 文中の言葉を用いて、三十五字以内で書け。 問六 内容 線5とあるが、父はどういうふうに「自 分に納得させている」のか。 最も適当なものを、 次か (5点) ら選べ。 ア子と離れて女と暮らす自分を後悔させるために吾 郎は姿を見せにくるのだ。 イ時子の健康を心配する自分を気遣って、吾郎は姉 が元気なことを知らせにくるのだ。 ウ父と離れても成績がよく、 学校で頑張っているの を誉めてもらいに吾郎はくるのだ。 エ子ではなく女と暮らすような自分でも、吾郎は父 親として一応認め、慕ってくるのだ。 問七内容 線6とあるが、吾郎は父がどういう気持 ちになると考えているのか。 最も適当なものを、次か ら選べ。 (5点) ア大仰に感謝の気持ちを表現する裏に自分を非難す る意図を感じ取り、大変不愉快になる。 おおげさなあいさつをされることで、もう二度と 吾郎が会いに来ないような不安に襲われる。 co ウ親として当然のことなのに他人行儀な態度をされ ると、親子の絆が薄れたようで寂しくなる。 生活費を受け取って大いに喜ぶ姿を見ると、 貧乏をさせているという自責の念にかられる。 問八吾郎の心情について、次の各問いに答えよ。 (6点) ① 主題 本文に描かれた吾郎の心情の説明として最も 適当なものを、次から選べ。 ア子と離れて女と暮らす父に反感を抱いているが、 病弱な姉のためにも生活費を父に頼らねばならな いことにやるせなさを感じている。 イ 自分を見捨てた父や女に実は激しい怒りを感じ ていながら、父の家に着くとそれを言い出せず、 早く逃げ出したくなる気弱な面がある。 ウ毎月同じことを訊ねてくる父にいらだたしさを 感じ、できるだけはやく役目を終えて帰宅したい と落ち着きをなくしている。 エ父の気持ちや女のひとの存在を気遣う余り、自 分の感情が素直に表現できず、やり場のないもど かしさを抱いている。 ねらい根拠と結びつけて考える ② 表現 ①で選んだものの根拠となる描写として最も 適当なものを、次から選べ。 (6点) ア 薄暗い電灯に照らされて所在なげに佇んでいる イ無言のままぶっきらぼうに受け取った ウ口の中で不メイリョウなありがとうを言う エ大仰に頭を下げて感謝する サブ きずな CA A 選 B 文学史 次の女流作家の作品を、それぞれ あとから選べ。 樋口一葉 ひぐちいちょう 林芙美子 こうだ あや 向田邦子 幸田文 ほうろうき ア「放浪記」 イ 「父の詫び状」 『おとうと』 ウ エ『祭りの場』 オ『たけくらべ」 m 次の説明に合う人物を、 あとから 選べ。 口語自由詩の確立者。詩集に『道 程』『智恵子抄』がある。 詩集『月に吠える」などで、繊細 な感覚を口語のリズムにのせた。 あいしゅう C哀愁が漂う叙情詩を作った。詩 集「在りし日の歌」などがある。 D詩集『二十億光年の孤独」などで、 生命感と孤独感を表現した。 かはらちゅうや ア 中原中也 たかむらこうたろう 高村光太郎 みよしたつじ ウ 三好達治 はぎわらさくたろう 工 萩原朔太郎 たにかわしゅんたろう 才谷川俊太郎 A A D B B もこうだくにこ C C 小説 68 D

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