第1回
第2問 次の問い(問1 問2) に答えよ。 (配点 25)
問1 エタノール C2H5OHは,燃料, 殺菌, 飲用などに広く利用されている物質
である。
バイオエタノールは,脱炭素社会に向けて, その利用の拡大が期待されてい
る燃料の一つである。これは,植物に含まれる糖質から得られる (a)グルコー
スC6H12Os を, 式(1)の反応により発酵させて製造されている。
C6H12O6 → 2C2H5OH + 2CO2
(1)
エタノールの殺菌効果は,エタノール水溶液の濃度(質量パーセント)が
40%程度から現れ, (b) 70%で効果がきわめて大きいと考えられている。
アルコール飲料には,エタノールが含まれている。 体内に入ったエタノール
は、酵素のはたらきにより, アセトアルデヒド CH3CHO, 酢酸 CH3COOH へ
と酸化される。(c)エタノールが酸化されてアセトアルデヒドになる変化は,
電子を含む次の式 (2) のイオン反応式で表される。
下線部(b)に関連して, 質量パーセント濃度70%のエタノール水溶液を調
製するためには, 水100mLに何mLのエタノールを加えればよいか。 最も
適当な数値を,次の①~⑤のうちから一つ選べ。 ただし, エタノールの密度
巻の車は 0.79g/cm,水の密度は1.0g/cmである。
10 mL
① 70
② 87
③ 140
④ 233
⑤ 295
C 下線部(c)に関連して, 硫酸で酸性にした 0.10mol/Lのニクロム酸カリウ
ム水溶液を用いてエタノールを酸化し, アセトアルデヒドにした。 用いた二
クロム酸カリウム水溶液の体積(mL) と酸化されたエタノールの物質量
(mol) の関係を表すグラフとして最も適当なものを、下の①~⑤のうちから
一つ選べ。 ただし, 用いた二クロム酸カリウムはすべて消費され, その酸化
剤としてのはたらきは, 電子を含む次のイオン反応式で表される。 11
Cr2O72 + 14H+ + 6 e → 2Cr3+ + 7H2O
C2H5OH
CH3CHO + 2H+ + 2e¯
次の問い (a~c) に答えよ。
(2)
a
下線部(a)に関連して, 式 (1) の反応により23gのエタノール (分子量46) を
得た。このとき反応したグルコース(分子量180)の質量は何gか。 最も適当
な数値を、次の①~⑤のうちから一つ選べ。 9
g
①30
② 45
90
④ 135
180
180
酸化されたエタノールの物質量
0.010
0.008
0.006
0.004
0.002
①
④
⑤
(mol)
'0
10
20
ニクロム酸カリウム水溶液の体積(mL)
30
式(1)より, CeH12O61molあたり C2H5OHが2mol 得られるの
で、 C2H5OH が0.50mol得られたときに反応したCeH12O (分子
化学反応式と量的関係
反応式の係数の比)
量180) の物質量は,
0.50 molx K1/12=0.25mol
であり,その質量は,
180g/mol×0.25mol=45g
なお、バイオエタノールは,植物の糖質から得られるグルコー
スの発酵により製造され、燃料に用いられる。 植物はその生育過
程で光合成により大気中の二酸化炭素 CO2 を吸収して糖質を生
成するため, 糖質から得られたバイオエタノールの燃焼により
CO2 が排出されても、全体としてCO2の量を増加させないと考
えられている。 そのため, バイオエタノールはカーボンニュート
ラルなエネルギーと位置づけられている。
9-
b 水100mL (=100cm²)にエタノール (mL) (= (m²)) を
加え, 質量パーセント濃度70%のエタノール水溶液を調製した
とする。 エタノールの密度が0.79g/cm3 水の密度が1.0g/cm²
なので, エタノール, 水, エタノール水溶液の質量は,
エタノール 0.79g/cm ×” (cm²)=0.79m (g)
(反応により変化する)
物質の物質量の
例えば, V=10mLのときx=3.0×10molであり,この点を
通る直線である②が適当である。
なお,式(4)は,次のように導くこともできる。
式(3)+式(2)×3 により e を消去すると, 次のイオン反応式が
得られる。
Cr2O7+8H + 3C2H5OH
2C
+ THO + 3 CH CHO
このイオン反応式より, C2H5OHは物質量比1:3で
反応するので,
質量パーセント濃度
溶液100gあたりに溶けている溶質の
質量(g) で表した濃度。
質量パーセント濃度(%)
溶質の質量(g)×100
- 溶液の質量(g)
液体の密度
水
1.0g/cm×100cm=100g
水溶液
100 g +0.79v (g)
よって、調製したエタノール水溶液の質量パーセント濃度につ
液体の単位体積あたりの質量。
いて,
0.79(g)
これを解くと,
70×100
-x100=70 (%)
|10| ⑤
液体の密度(g/cm²)
液体の質量(g)
液体の体積(cm)
100 g+0.79v (g)
100×0.79=70×100+70×0.79㎡
100-70)×0.79mL=295.3mL=295mL
c 硫酸H2SO4 酸性のニクロム酸カリウム K2C1207 水溶液を
用いてエタノール C2H5OHを酸化し, アセトアルデヒド
CHCHO にするとき, 酸化剤および還元剤のはたらきは, それぞ
れ次の電子を含むイオン反応式で表される。
C207 +14H+ + 6e → 2C++ 7H2O (3)
C2H5OH→ CH3CHO + 2H+ + 2eT
(2)
用いた 0.10mol/LのK2C207 水溶液の体積をV (mL), 酸化さ
れた C2H5OHの物質量をx (mol) とすると, Cr072 が受け取
eの物質量」 = 「C2H5OH が与えるe の物質量」より,
V
0.10mol/Lx- (L) x6=x (mol)×2
x=3.0×10 V
1000
(4)
酸化還元反応の量的関係
酸化剤が受け取るの物質量
還元剤が与える e の物質量
0.10mol/Lx- V
1000
(L):x (mol)=1:3
x=3.0×10 y
問2 消火と消火薬剤を題材とした総合問題
11 -②
消火は,一般に次の3要素のうちの一つまたは複数の組合せで
実現される。
・可燃物を取り除く。 例えば, ガスコンロの栓を閉める。
・酸素の供給を断つ。 例えば, 可燃物を覆い, 空気中の酸素との
接触を遮断する。
a
・可燃物から熱を奪い、燃焼に必要な温度以下に冷却する。
イオン化傾向が大きいエのLiやK, Ca, Na は, 常温の水
と反応して水素を発生し, 熱水とも同様に反応する
2Li + 2H2O → 2 LiOH + H2
ウのMg は, 常温の水とは反応しないが, 熱水とは反応して水
素を発生する。
Mg + 2H2O
Mg (OH)2 + H2
以上より, 正しい組合せは ⑥ (ウ,エ) である。 なお、これらの
金属が用いられている電池などの装置や設備の火災の際には, 水
で消火しようとすると、 上記のような反応が激しく起こり, 水素
が発生するので大変危険である。
12 ・・・⑥
b 二酸化炭素の固体はドライアイスとよばれ, 大気圧下で昇
華して気体になる。 圧縮して液体にした二酸化炭素を消火器から
噴出させると,一部の二酸化炭素は蒸発して気体になり、 残りは
ア凝固して粉末状の微細なドライアイスが生じる。 このドライア
イスが空気を遮断するとともに, 周囲から熱を吸収しながら
華して気体になるので, 消火の効果をもつ。
(参考)
物質のもつエネルギーはその状態によって異なり, 固体<液体
<気体の順に大きくなる。
金属のイオン化傾向
金属の単体が水(水溶液) 中で電子を放
出し, 陽イオンになろうとする性質。 イ
オン化傾向が大きい金属の単体ほど水中
で電子を放出してイオンになりやすい。
Li>K>Ca> Na> Mg> Al> ZnFe>
Ni> Sn> Pb> (H2)> Cu> Hg>Ag>
Pt> Au
金属と水の反応
・Li Na・・・常温の水と反応し、 H2 を発
生する。
・Mg・・・ 熱水と反応し、 H2 を発生する。
・Al Fe・・・高温の水蒸気と反応する。
9-
解説ありがとうございました!!長文の問題だったのに本当にありがとうございました🙇♀️見るところがペンで囲んであってすごく理解しやすかったです✨
ちなみになのですがグラフの問題の時はグラフの物質の半反応式が書いてある場合、電子の係数を先に見るのが良いのでしょうか??お手数をおかけしてしまいすみませんがお時間がある時に教えていただけたら嬉しいです🙇♀️