✨ ベストアンサー ✨
それは「今昔物語」ではないでしょうか。
羅生門では今昔物語とはちがい下人は老婆の着物だけを持ち去っています
「今昔物語」では、あくまでも盗みのために都に来た男を描いています。盗みのために来たのですから、生者のものであっても死者のものであっても、「洗いざらい」奪うでしょう。
しかし「羅生門」においては、平凡な市民だった男が、盗人として生きると決断したばかりの状態なのです。
老婆は生者であり、生者から奪うのは、「盗人になることを決断した者」にできる、ぎりぎりの選択だったろうと思います。
「死者を冒涜するわけにはいかない」という、市民としての意識は、盗賊となることを決断してなお、彼の心の内にあっただろうと思います。
少々視点を変えて、たとえば髪を奪ったとして、彼はそれをどう扱うでしょうか。
長年、盗賊をやっていれば、奪ったものをさばくネットワークもできるでしょう。しかし彼はそんなネットワークを持っていません。
髪の束を持ったまま、途方にくれるだけでしょう。
羅生門において下人は盗人になることを決断したのです。市民は、衣服でも回答でも、盗むことは許されないのです。