ノートテキスト

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2
○フェノール性ヒドロオキシ基の検出反応~FeCl 3による呈色~
この、ヒドロキシ基がベンゼンの共鳴に巻きこまれているため、
特殊な反応をする。それがFecl3による検出反応である。
これは、Fe3+とフェノール性ヒドロキシ基が錯イオンを作り
呈色する反応である。
[フェノールの呈色反応]
この反応で赤紫~紫青紫色に呈色する。
Fe cloを加えて、紫系の色になるときは、フェノール性ヒドロオキシ基
があると考える。この反応はフェノールだけでなく、フェノール性ヒド
ロキシ基と他の官能基がついた物質でも起こる。
例えばクレゾールも呈色反応をする。
OH
CH3
○フェノールの検出反応
次は、ピンポイントにフェノールと決定できる反応である。
臭素水を加えることで、 白色沈殿が生じる反応である。
この反応によりトリブロモフェノールという白色沈殿が生じる。
臭素水を加えて白沈→フェノールと判断する。
OH
Br ・Bro芳香族にヒドロオキシ基がついていたら
Br
←
CH₂-OH
例えば、ベンジルアルコールは、フェノール性ヒドロオキ
三基のような反応は起こさない。
ベンゼン環に直接、ヒドロキシ基がついていな
いため、OHの非共有電子対が共鳴にすいよ
せられることがない。なので、フェノールと異なり、
中性で、普通のアルコールのようにとりあつかう。

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2922 7
フェノールの性質と検出反応まとめ1
○フェノールはなぜ酸性か。
これはベンゼンの共鳴が関わっている。共鳴状態の電子は、
非常に安定している。
共鳴による安定化
120k
このように、共鳴していることでエネルギー
120 kJ
レベルがすこし下がっている。
120 kJ
210K そこで、普通の2連結合×3よりエネルギー
が下がり安定している。
共鳴というのは電子の集いのようなもので、ベンゼン環の外に
いる他の電子もこの集いには参加したいと思っている。
H
H-
H H
H
→ H-C
H
H
-
H+
H
結合
このようにヒドロキシ基のOHの○の非共有電子対がこの
共鳴に引きよせられる。すると、電子が好きな○原子は、電子が
取られたため、Hから電子を奪う。そこで,H+は外に放出される。
以上のことから、普通のアルコールよりベンゼン環にOHがついて
いる方が、H+が取れよくなる。そのためフェノールは酸性に
なる。
○フェノールのエステル化
フェノールもOHに、一応、非共有電子対があるため、カルボン酸と
エステル化をする。
しかし、非共有電子対がベンゼンに引きよせられているため、
エステル化の反応を起こす力が弱い。 そこで、相手のカルボン酸
を、カルボン酸無水物にすることにより、非共有電子対を引きよ
せる力をつよくする。
CH3-Co
HO
0
--CH
CH3
酢酸フェニル
CH-
これにより酢酸フェニルができる。
ちなみに、ベンゼン環からHを1コ抜いたものを
フェニル基という。
フェニル基
COSETEAF BOGAT 636

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◎有機化学・フェノールの反応
No.
Date 2022 8 1
ここでは、フェノールから出来上がる物質(誘導体)の反応
を挙げていく。
●フェノールの誘導体はオルトパラ配向性が前提
フェノールから生成出来る物質というのは既にベンゼン環
にOHがついているフェノールに別の陽イオンがアタックする
反応が起こる。 当然、 配向性が絡んでくる。
8-
QH
OH OH基は電子供与性だから、ベンゼン環
OH
のオルト位
とパラ位がマイナスにかたより、そこに陽イオンが
アタックするようになる。(オルト・パラ配向性)
以上のことから、フェノールから作られる物質は、オルト
かパラ、またはオルトとパラ両方に置換される場合
が多い。
●2,4,6-トリブロモフェノールの生成反応
この2、4、6はフェノール、つまりヒドロオキシ基がくっついているところ
を1と数える。だから,2,4,6は、オルト位、パライになる。
臭素Brはブロモといわれるので、2,4,6-トリブロモ
OH
Br
フェノールという名前になる。
6
4
Br
3
なお、これは『白色沈殿』になるため、『フェノール』
の検出反応になる。
「臭素と反応させて白色沈殿を生じた』とあった
ら、フェノールが存在することになる。
なお、注意しなければいけないのは、臭素のベンゼン環への
置換のときは、鉄触媒が必要だったが、オルトパラ配向
性というのは、非常に反応しよいため触媒なしで反応する
ことができる。
臭素水を加えるだけで白色沈殿ができる。

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0₂N
機化学
2,4,6-トリニトロフェノール(ピクリン酸)の製法
NOz
No.
Date
OH これはフェノールをニトロ化することでできる物で
ある。これはニトロ化と同じ触媒で、濃硝酸
+濃硫酸の混酸をフェノールと反応させること
NO2
によりできる。そして、この2,4,6-トリニトロフェノー
ルのことをピクリン酸という。
+
ニトロ基は爆発するので、ピクリン酸は爆発性をもつ。
そして、ピクリン酸は強酸である。ニトロ基は電子吸引性
なので、電子供与性のOHからeが吸いとられる。 -OH基で、
OH 電気陰性度が大きいのは、をとられてしまい.
NO2
NO2ピーを奪っていく。そこで、フェノールよりもはるか
H+を投げる力が増加し、強酸になる。
似たような物に、トリニトロトルエンがある。
CH3がベンゼン環についたトルエンにニトロ基がくっつ
いていく。 -CH3は電子供与性だから、オルトパラ配向
性である。(2,4,6-トリニトロトルエンになる。
慣習的に2,4,6-というのをつけない。
CH3
ピクリン酸同様トリニトロトルエン TNTも
O.N NO:爆発性をもつ。
NO2

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有機化学 フェノールの反応3.
●サリチル酸の工業的製法
No.
Date
サリチル酸をつくる行程は、『コルベシュミット法』といわれて
いる。その反応の流れを追っていく。
1. NaOHを加える
配向性では、電子供与性が最強なのは○である。
そこで、オルトパラ配向性を最強にするために、NaOHを加
える。これによりフェノールをフェノキシドイオンにする。
すると、中和反応により、ナトリウムフェノキシドができる。
水溶液中では完全電離をする。ということで、オルト
パラ配向性が最強になる。
DOO Na
2.CO2を高温高圧で加える。
+c-o
o
二酸化炭素というのは、実は、たまに陽イオンになる。
O=C=0 そして、このタイミングを逃さないために、高温
で二酸化炭素の運動をはげしくし、高圧で
フェノキシドにアタックする。
このようにアタックすると、サリチル酸イオンが
できる。
高圧で
①c-o
H
→
押しつけ
brcoo-
3.フェノキシドイオンをフェノールへ
二酸化炭素をフェノキシドイオンに入れると、弱酸遊離反
応で、追いだされ、炭酸が炭酸イオンになる。
フェノキシドイオンはフェノールにもどる。
0-
・Coo
OH
Coo
+HCO3-

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No.
Dato
4.弱酸遊離反応でサリチル酸イオン状態からサリチル
酸イオン状態からサリチル酸を遊離
そして、最後にサリチル酸を弱酸遊離反応でとりだす。
OH
Co-
coo が得られる。
カルボン酸よりつよい酸を加えればサリチル酸
COOH
+HA
☑OH
以上のような流れでサリチル酸ができる。
Hなどをよく入れる。

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ベンゼンスルホン酸からフェノール製法2
No.
Date
*ベンゼンスルホン酸→ベンゼンスルホン酸ナトリウム
まず、ベンゼンスルホン酸をベンゼンスルホン酸ナトリ
ウムに変える。
ベンゼンスルホン酸は強酸だから、強塩基の水酸
化ナトリウムと中和反応をする。
SOJH
2
NaOH
SO,Na ベンゼンスルホン酸を中和させて
イオン化させると、沸点が高くなり
揮発しなくなる。高圧にしなくてよい。
ベンゼンスルホン酸ナトリウム ナトリウムフェノキシド
この反応が、この方法が「アルカリ融解法』といわれる
理由である。
✓DO
sosNa SO3は陰イオンになりたいため、また、Cより
Sの方が電気陰性度が大きいため、
Na
②OH C-S間の共有電子対を引きちぎっていく。
@sona このように、ベンゼンが陽イオンに
なることで、ベンゼン環のCが陽
イオンになる。このように、ベンゼン環
は炭素を陽イオンにしないと、OHが
アタックできない。
TOH
なぜなら、ベンゼン環は安定な電子なため、全体的に
マイナスを帯びている。だから、陰イオンのOHイオンなどは
近づけないからである。
このことから、まず別の陽イオンノの(SO3H)にアタックさせ、
電子をベンゼンから引きちぎらせて、陽イオンにしてから、
OHでアタックする。
ただ、やはりベンゼンスルホン酸のSO3Hが抜ける反応
というのは、無理やりである。そこで、OH-のアタックする
力をつよめるために、NaOHを超高濃度にする。最強の
高濃度というのは、『固体』である。
このベンゼンスルホン酸からフェノールを経由する方法を
アルカリ融解法というが、融解とは「固体から液体に

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No.
有機化学 クロロベンゼンを経由してフェノールを生成・Date 20228
○クロロベンゼンを経由するフェノールの製法の流れ
・10
ベンゼン クロロベンゼン
まずベンゼンをクロロベンゼンにする。
<ce H+ ceがベンゼン環にアタックしてHと置換する。
反応式は
C6H6+Cz→C6H5Cl+HCl
・クロロベンゼンからナトリウムフェノキシド
クロロベンゼンを、高温高圧条件でNaOHと反応させる。
クロロベンゼンのCはCより電気陰性度が
Doce
大きいため、共有電子対を引きよせる。
高温でOHがベンゼンでアタックする。
Doce
しかし、ベンゼンは負の電荷を帯びている
ので、いきなりはOH"とは反応しない。
Bo
OOH
でも、電気陰性度の大きいcleが、共有電子
対ごとえぐりとっていくため、ベンゼンは
陽イオンになる。そこでOH-は問題なく
OH
ベンゼンにアタックできる。
そこでフェノールができる。
LOOH
しかしフェノールはNaOHにより中和され
ナトリウムフェノキシドになる。
・ナトリウムフェノキシドからフェノールへ
ナトリウムフェノキシドの入っている溶液にCO2を通じる
と、フェノールが遊離する。
ONa+H2CO3→
OH+NaHCO3
以上から、フェノールが得られた。

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No.
有機化学 ベンゼンスルホン酸からフェノール製法
入試におけるフェノールの製法は3つある。
・クロロベンゼンを経由する方法
クメン法
・ベンゼンスルホン酸を経由する方法
2022 8
ここでは、ベンゼンスルホン酸を経由してフェノールを作る方法
SOH
YOH
について考える。
ベンゼンスルホン酸を経由するフェノールの製法の流れ
○ベンゼン→ベンゼンスルホン酸
まず、ベンゼンからベンゼンスルホン酸にする。
濃硫酸中のH2SO4がH+をぶつけて,SO3H+の陽イオン
をつくる。
① HSO4
②
Sからをもらう
③
Ho
0
H2O
H+
D
-S
-OH
H+
11.
HOS-OH
④S-OH
10
②
これが、ベンゼンのC-H間の共有電子対をアタックする。
?
④S-OH
-OH H+ Hso
このようにして、硫酸イオンは元の硫酸にもどり、触媒
の役目をする。
以上から、下のように脱水縮合と考えてもよい。
10
H HO-S-OH
y
SO3H

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ベンゼンスルホン酸からフェノール製法3
No.
Date
なる事』である。水酸化ナトリウムの固体を液体にして
それでベンゼンスルホン酸にアタックさせる。
S03Na
OH OH
高濃度のNaOH このように高濃度にすると、たくさんで攻
OHで総攻撃 撃できるので、SO3-NaがとれてOH-が
くっつきやすくなる。そこで、OH-がくっつく
が、周りがNaOHだらけなのですぐ中和
されてナトリウムフェノキシドになる。
yooNa
○ナトリウムフェノキシド フェノール
ナトリウムフェノキシドからフェノールを取りだすのは、弱酸
遊離反応による。
ナトリウムフェノキシドの溶液に、二酸化炭素を通じること
によりCOzより弱い酸のフェノールが得られる。
○注意点
ベンゼンスルホン酸経由でフェノールを作るときは高圧
条件は不要である。ベンゼンスルホン酸ナトリウムは非常
に沸点が高くて、揮発しない。そこで、揮発しないように
高圧にする必要はなくなる。

ページ11:

・注意点
No.
Date
クロロベンゼンから、ナトリウムフェノキシドを得る時、高圧
にするのは、実はuがついているクロロベンゼンは揮発
性をもつため、揮発をおさえるためである。
クロロベンゼンに限らず、cl がついている物質は揮発
性をもっている。
クロロベンゼンに対するOH-の攻撃力を強めるため、高温
にしているが、高温にするとクロロベンゼンが揮発して
しまう。これを抑えるため、高圧にしている。
揮発
できない

ページ12:

有機化学 クメン法によるフェノールの製成
○クメン法に登場する物質
・ベンゼン 回
・プロピレン(プロペン)
No.
Date
C-H
H
H
H
ベンゼンが、プロペンに付加反応をして
クメンになる。
・クメン CH3-C-CH3
・メンヒドロペルオキシド
クメンをおだやかに酸素で酸化したもの。
CHI
-O-OH
CH3
ちなみに『ペルオキシド』とは『過酸化
物』を表している。
○クメン法の流れ
①ベンゼン+プロピレン→クメン
CH3
+CH→
CH₂
CH3
CH
CH3
②クメンからクメンヒドロペルオキシドを作る。
GHS
CH3
CH酸化
CH
G-O-OH
CHS
③クメンヒドロオキシドを酸で分解
CH
G-O-OH→
SH3
O-OH OH + c = 0
CH3
とHz
このようにしてフェノールとアセトンができる。

ページ13:

クメンの生成方法
No.
Dato
クメンを作るのは、プロペンにベンゼンを付加させて作る。
ちなみに、ベンゼンからすると置換反応である。
H
WH
+H-C-C=C-H
→ 11-c-
―
H
\H
↑
山
N ≤ H
付加反応なのでマルコフニコフ則(Hが多いほうにHが
くっつく)が適用される。
ただし、この反応の触媒として濃硫酸が必要になる。
濃硫酸は、H+を投げるために濃硫酸を使っている。
○クメンを酸化
クメンを酸素で緩やかに酸化すると、クメンヒドロペルオ
キシドができる。
CH3
CH
CH3
0=0
CH3
-O-OH
CH3
クメンのC-Hの間にO2が入りこむ!
クメンヒドロペルオキシドはこのように作られる。
○クメンヒドロペルオキシドを酸で分解
CH3
← HO-0-3
CH3
CH3
OH + 2=0
CHS
このようにクメンヒドロペルオキシドを希硫酸のような酸を
用いて、フェノールとアセトンができる。
CHS
0-011-
一このようにとれるとおぼえる
ICHI
このように、アセトンを副産物として得られるため、日本
ではほとんどがクメン法で生成されている。
また、フェノールの別の製成法であるアルカリ融解法など
は、水酸化ナトリウムを融解しなければいけないため、
非常にコストがかかる。

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