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36 2016年度 化学
3
東北大 理系前期
東北大 理系前期
実験 2
炭素,水素,酸素原子のみから構成される, 分子量 400以下の化合物があ
る。化合物Aには,シスートランス異性体が存在する。 また,化合物は,不
斉炭素原子を2つもつ。 以下の文章と、実験1から実験 8に関する記述を読み,
問1から問に答えよ。 構造式は下記の例にならって書け。ただし、置換基のシ
スートランス配置および不斉炭素原子の存在により生じる立体異性体は区別しな
くてよい。
(例)
-CH
C
-CH2CH2-
-CH=C-CH3
$1
OH
CH3
H3C
炭素-炭素二重結合をもつ化合物に対して, 適切なルテニウム錯体を触媒とし
作用させると, 二重結合を形成する炭素原子が組み換わった化合物が生成す
る。この反応はメタセシス反応とよばれ, シス体, トランス体のいずれのアルケ
ンでも進行するが, ベンゼン環では進行しない。 ①式に3-ヘキセンとエチレン
から 1-プテンが生成するメタセシス反応の例を示す(エチレンおよび生成物中の
エチレン由来の炭素原子を太字で示している)。 ①式の反応は, 可逆反応であ
り,一定時間後には平衡状態に達する。 この反応を, 3-ヘキセンとこれに対し
て過剰な量のエチレンを用いて行うと, 反応が右向きに進むように平衡が移動
し, 3-ヘキセンの大部分を1-ブテンに変換することができる。
2016年度 化学 37
化合物Aを,適切なルテニウム錯体の存在下に, 過剰な量のエチレン
と接触させると, メタセシス反応が起こり,化合物 B, C が生成した。 化
合物 B は分子量 90 以下であり, 問2に示す方法でポリビニルアルコール
に導くことができた。
化合物 Aに対して、適切な触媒を用いて水素を付加させたところ、分
実験 3
子量が2.0 増加し,不斉炭素原子を3つもつ化合物Dが得られた。
実験 40.1molの化合物Aに対して、十分な量の水酸化ナトリウム水溶液を加
えてエステル結合を加水分解したのち,希塩酸を加えて酸性にしたとこ
酢酸および化合物 E, F,G 0.1molずつ得られた。 化合物Eは不
斉炭素原子をもたないが,化合物Fは不斉炭素原子を2つもち、化合物
Gは不斉炭素原子を1つもつことがわかった。
実験 50.1molの化合物 D に対して, 十分な量の水酸化ナトリウム水溶液を加
えてエステル結合を加水分解したのち, 希塩酸を加えて酸性にしたとこ
酢酸および化合物 E, F, Hが0.1molずつ得られた。 化合物 Hは不
斉炭素原子を1つもつことがわかった。
実験 6
化合物 Eは塩化鉄(ⅢII) 水溶液と反応し、 紫色を示した。 また、 化合物 E
は、 問3に示す方法でアニリンから合成することができた。
3-ヘキセン
CH3CH2CH=CH-CH2CH 3 ルテニウム CH3CH2
-CH2CH3
錯体
*CH
HC
①
+
H2C=CH2
エチレン
H2C
CH2
1-ブテン
実験7 化合物Fにヨウ素と水酸化ナトリウム水溶液を加えて加熱したところ,
不斉炭素原子をもたない化合物のナトリウム塩と黄色沈殿が, 1:1の
物質量の比で得られた。
化合物 G をガラス製の試験管にとり, アンモニア性硝酸銀溶液を加え
て穏やかに加熱したところ, 試験管の内側に銀が析出した。 この際,化合
物Gは酸化され, 化合物 I の塩を与えた。
実験 8
実験1 化合物 A174mg を完全に燃焼させたところ, 二酸化炭素 418mg と水
108mg が生成した。