参考 血縁度と包括適応度
適応度 動物の社会では, しばしば他個体を助ける行動が見られる。 親による子の保
一護がその典型的な例である。 生まれた卵や子を保護しながら世話することで, 結果として
幼齢期の死亡率を低下させ, 生き残る子の数を増やすことにつながる。 ある個体が残した
子のうち, 生殖可能な年齢まで達した子の数を適応度といい, 適応度が高い個体ほど、
自分と同じ遺伝子を多く残すことができる。 親による子の保護は,親自身の適応度を高め
る行動といえる。
きおうと
② 血縁度と包括適応度 2つの個体が遺伝的にどれだけ近縁かを示したものが血縁で
ある。血縁度は,2個体が共通の祖先に由来する特定の対立遺伝子をともにもつ確率によっ
兄弟姉妹間
て表される。 哺乳類や鳥類などの二倍体の生物では,親子間の血縁度は
この血縁度は となる(図I)。つまり,ある個体の特定の対立遺伝子を他個体がもつ確率
を考えた場合,子が1個体生存することと兄弟姉妹が1個体生存することでは,その確率
は等しくなる。これは,血縁関係にある他個体から生まれた子にも,自分と同じ対立遺伝
子が受け継がれているためである。
2
10
(自分がもつ遺伝子 X が父親由来である場合)
XX
母親
父親
①自分がもつ遺伝子 X が父親由来である確率は
②父親がもつ遺伝子 X が兄弟姉妹に伝わる確率は
①,②より,自分がもつ遺伝子X が父親由来で
兄弟姉妹も父親由来の遺伝子 X をもつ確率は,
×
4
同様に,自分がもつ遺伝子Xが母親由来で,
兄弟姉妹も母親由来の遺伝子 X をもつ確率は,
×
2
交配相手
自分
兄弟姉妹
兄弟姉妹間の血縁度… 1+1=1/
A
子
① 図 I 血縁度の求め方(二倍体の生物の場合)
父親由来 母親由来
の場合 の場合
③自分がもつ遺伝子 Xが子に伝わる確率は 2
→
親子間の血縁度… 1/12
●同じ遺伝子座に異なる形質を現す遺伝子が複数存在する場合、 異なる遺伝子それぞれを対立遺伝子
(アレル)という(p.33)。
末チェック
■同種の個体どうしが群れをつくることによってどのような利益を得ることが
できるか。また,同時にどのような不利益が生じるか。説明してみよう。