TA
●次の文章を読んで、あとの1・②の問いに答えなさい。
えちご
かすが
いまづ
はらから
越後の春日を経て今津へ出る道を、珍らしい旅人の一群れが歩いている。
母は三十歳を喩えたばかりの女で、二人の子供を連れている。 姉は十四、 弟
は十二である。それに四十ぐらいの女中が一人ついて、くたびれた同胞二人
を、「もうじきにお宿にお着きなさいます」と言って励まして歩かせようと
する。二人の中で、姉娘は足を引きずるようにして歩いているが、それでも
気が勝っていて、疲れたのを母や弟に知らせまいとして、折り折り思い出し
たように弾力のある歩きつきをして見せる。近い道を物詣りにでも歩くのな
ら、ふさわしくも見えそうな一群れであるが、笠やら杖やらかいがいしい出
立ちをしているのが、誰の目にも珍らしく、また気の毒に感ぜられるので
ものまい
かさ
つえ
た
ある。
(森鷗外「日本の文学3森鷗外 (二)」所収「山椒大夫」 中央公論社)
送り仮名は原典に従っています。
-H