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54 胚乳の遺伝
被子植物の花粉は、花粉母細胞がアを行ってできた配偶体 (n) である。 花粉は
胞核と合体して胚 (2n) を もう1つは胚のう中央部にある2個のウと合体融合
柱頭に運ばれて発芽するが, 花粉管内の2個のイのうち1つは胚のう内の卵細
本的には種皮. 胚. および胚乳であるが、エにより胚乳と胚は両親に由来する遺
して胚乳 (3n) をつくる。 この型の受精はエと呼ばれる。種子の主要部分は、基
伝情報をもつことになる。
モチ性とウルチ性は、単一の遺伝子座に支配され, ウルチ性(遺伝子記号A)がモチ性 ( 遺
トウモロコシのモチ性とウルチ性に着目して, 遺伝の実験を行った。 トウモロコシの
伝子記号 α)に対して完全優性である。 遺伝子Aはアミロースというデンプンの一種の
合成に関わっている。 アミロースは、ウルチ性トウモロコシの胚乳に通常25%程度含
まれるが, モチ性トウモロコシの胚乳には含まれていない。 モチ性とウルチ性は、胚乳
をヨード染色することで容易に判別できる。
【実験1】 自家受精をくり返し, モチ性のみを生じるようになったトウモロコシW系統
(W) と, ウルチ性のみを生じるようになったトウモロコシX系統 (X) を用意した。
Wの1個体の雌花にXの花粉を受粉させ、得られた種子の胚乳を観察したところ、すべ
てウルチ性であった。
【実験2】 WやXとは由来の異なる系統の中から、胚乳に70%近いアミロースが含ま
れる突然変異個体が見つかった。 この個体の自家受粉をくり返して、つねに胚乳のアミ
ロース含量が70%近くになる(以下,この形質を高アミロースという) トウモロコシ Y
系統(Y) を得た。続いて,高アミロースと, 遺伝子Aまたはαが関わるアミロース合成
との関係を調べることにした。 Xの雌花にYの花粉を受粉させたところ、実った種子は
すべてウルチ性と同程度のアミロースを含んでいた。 このF1を育て, 自家受粉させて
実った種子の胚乳を調べたところ,高アミロース種子と, ウルチ性と同程度のアミロー
スを含む種子がおよそ1:3の割合で出現した。
これと並行して、Wの雌花にYの花粉を受粉させたところ、 実った種子はすべてウル
チ性と同程度のアミロースを含んでいた。 このF1を育て, 自家受粉させて実った種子
の胚乳を調べたところ,高アミロース種子, ウルチ性と同程度のアミロースを含む種子 ,
およびアミロースを含まない種子がおよそ3: 9:4の割合で出現した。
■問文中の ア~エに適切な語句を入れよ。
論述問2 【実験1】で得られた結果について, その理由を,遺伝子記号Aおよびαを用いて
胚乳や胚乳形成に関わる細胞核の遺伝子型を示しながら,70字以内で記せ。 アルファ
ベットは1文字と数える。
問3 【実験2】に関して、遺伝子A やα以外に、独立な単一遺伝子座に存在する遺伝子
Bやbを仮定する (Bがんに対して完全優性)と,得られた結果が説明できそうである。
このように仮定した場合,高アミロースが発現する胚乳の遺伝子型を遺伝子記号 A.
a, B. あるいはbを用いてすべて記せ。
(北海道大)
第53講
BC