対称性の高い分子である.図8.5に示すように, 正八面体の中心に硫黄原子が
第8章 分子の形
8.1.4 sp°d°混成軌道
S
ょる六フッ化硫黄 SF。について考えてみよう. SF。は正八面体型の非常に
n 6個の頂点にフッ素原子が位置している.硫黄原子の基底電子配置は
(2s)(2p)°(3s)(3p)", フッ素原子の基底電子配置は(1s)°(2s)°(2p)°であ
るセル·モデルで表せば,以下のようになる。
1s
2s
2p
3s
S
1!
f!
t!
F
1!
1↓
S原子の基底状態では, 不対電子が2個しか存在しないので2個のF原子と
しか結合できない. そこで, 結合の手を6本にするために, 1個の3s 電子と1
個の3p 電子を3d軌道に昇位させて, 次頁のような励起電子配置にする。し
かし、このままでは幾何学的な構造を説明することはできない. そこで, 3s
軌道,3個の3p 軌道, 2個の 3d軌道を混成させて, sp°d° 混成軌道をつくる。
ここで,混成に参加する 3d軌道は, その方向性から考えて 3dgと 3dz-yであ
る. これらの軌道は, (8.4) 式で示される等価な軌道で, 図 8.6に示すように
ての方向はちょうど八面体の中心から頂点の方向に張り出した格好をしている