34 Chap. 1 有機化学の基礎: 化学結合と分子構造
結合性 Amolec
ニ
図 1.10 結合性分子軌道
(a) 同位相(同じ色で表している)の水素 1SのAO が二つ重なって結合性分子軌道を作る. (b) ニっ
の波動が同じように同位相で重なると振幅が増大する.
これらのぼやけた領域が軌道を表しており, 量子力学の原理を適用するとこの結果が得られる
波動関数の2乗 ()をプロットすると、軌道とよばれる三次元の領域が得られ,その領域にお
ける電子の存在確率は非常に高い。
*原子軌道 atomic orbital (AO) は、孤立した原子において電子の存在確率の高い空間領域で
ある。
図1.10の水素のモデルでは, ほやけた球は各水素原子の1s 軌道を表している.二つの水素原
子が互いに近付くにつれて, その 1s 軌道が重なりはじめ, 原子軌道が結合して分子軌道になる。
*分子軌道 molecular orbital (MO) は, 分子において電子の存在確率が高い空間領域である。
軌道(AO でも MO でも)は, スピンが対になった電子(Pauli 排他原理)を2個まで収容
できる。
*AO が結合して MO ができるとき, MO の数は常に結合した AO の数に等しい。
したがって,水素分子ができる場合,二つの AO (b)が結合すると二つの MO ができる.二
つの軌道ができるわけは, 波動関数の数学的性質からきており, 波動関数は和あるいは差によっ
てのみ結合できるからである. すなわち,軌道は同じ位相で重なるか,または逆位相で重なるの
である。