国語
中学生

言葉は世界を切り分ける
を今やっています。
この文章のテストを解いたことがある方、どのような問題が出ると予想されるか教えてください!
また、この文章に出てくる「点」と「面」とは何かとテストで聞かれた場合、どう答えたら良いでしょうか?
また、p3の2行目の「異なる言語は世界を異なる仕方で文節する」とはどういう意味かと聞かれた場合、どう答えるのが正解でしょうか?
最後に、p1の10行目の「その単語を知っている」とは、ここではどういうことでしょうか?

言葉は世界を切り分ける 今井むつ 私たちは母語である日本語で、膨大な語彙を持っていて何万もの言葉を知っていて、 それらの言葉の大半を実際に使い、人と会話をしたり、文章を理解したり、書いたりして いる。しかし、「言葉(単語)の意味を知っている。」ということはどういうことなのだろ 「うか。「知っている」言葉は必ず実際にコミュニケーションで使えるのだろうか。 母語 D ●題提起 実際に使うために言葉について何を知らなければならないかということは、母語より も外国語のことを考えたほうが分かりやすいかもしれない。外国語では言葉を自在に 使ってコミュニケーシェンのおかりやすいかもしれない、それは「知っている音楽」 辞書に書いてい が少なすぎるからだと考える。外国語の習熟度の測定では、辞書の語義を与え、多肢選 択の形で複数の語の候補から語義に合うものを選ぶという形式のテストが一般的だ。 正 しい選択肢が選べれば解答者はその単語を「知っている」と判断されるわけである。しか し、語彙数が多ければ外国語が使えるというわけではない。日本人には外国語の難しい 文献を読むことができても、話したり書いたりするのは苦手という人がとても多い。そ の原因はほとんど、辞書に書いてある語の意味を覚えていても、語の使い方が理解でき ていないことにある。では、辞書の定義を覚えていて多肢選択問題では正しく選べると いう意味の知り方と、実際にその言葉を「使える知り方」は何が違うのだろうか。 「その単語を「知ってい る』」とは、ここではどう いうことか。 る。 色で具体的に例えている言葉を知ることは「点」ではなく「面」である 前者の知り方は「点としての意味」を知るだけだが、実際に言葉を使うためには「面」 としての意味を知らなければならないのである。単語の意味は単語単体では決まらず、 @ それぞれの意味領域の中に属する一群の関連する単語どうしの間の関係の中で決まる。 色の名前を例に考えてみよう。色は光の連続スペクトルであり、私たちの目には電磁 波のうち三八〇ナノメートルから七八〇ナノメートルの波長の範囲でさまざまな色彩が 連続して映っている。色は色相、彩度(鮮やかさ)、明度(明るさ)という三つの属性で 物理的に数値として表すことができる。私たちの目は何万もの「物理的に違う色」を識別 てきるが、それらの「違う色」をごく少数のカテゴリーに分節して名前を付け、分類を しているのである。トマトの色、消防車の色、イチゴの色はそれぞれ物理的には異なる 色であるが、私たちは皆「赤」と呼ぶ。つまり、「赤」という言葉は特定の物の色、つま リスペクトルの中の点を指すわけではなく、連続スペクトルの中の特定の範囲を指す。 そしてその範囲は「赤」を取り囲む色の名前が指す範囲との関係によって決まるのであ 一つ一つの単語の意味を学ぶということは、単語が属する概念領域全体のマップの中 その単語の位置付けを学び、更に領域の中で隣接する他の単語とどう違うのかを理解 し、他の単語との意味範囲の境界を理解することにほかならない。 これは母語でも外国 語でも同じである。母語と外国語の意味領域が同じように切り分けられていて、母語の 単語と外国語の単語が同じ範囲できれいに対応するのなら、外国語を学習する時には、 はんちゅう ②色は光のスペクトル こ こていうスペクトルとは波 長の分布のこと。可視光線 プリズム(分光器) て分 解すると、紫から赤までの 切れ目のない連続した波長 (色)として表れることを いう。 ③色相 他の色と区別する ための色の特質。赤み、黄 み、青みなど。 カテゴリー 同じ性質の ものが含まれる範囲。 範疇。
慨観…大体のみる 単に母語の単語を、それに対応する外国語の単語に置き換えればよい。つまり、音をす げ替えればよいだけの話である。しかし、実際にはそうはいかない。異なる言語は世界 異なる仕方で分節するからだ。 日本語と英語の色名の数は大体同じで、ほぼ一対一対応が可能な色の語彙を持つよう にみえるので、色の名前の付け方は人類共通なのかと思ってしまいそうだ。しかし実際 には、世界の言語の中には色の名前が二つしかない言語もあるし、大多数の言語は色名 が四つから七つの間である。 日本語や英語のように十前後も色の基礎名がある言語は少 数派なのである。ほぼ一対一対応が可能な色の語彙を持つようにみえる英語と日本語の 間でも、詳しく調べてみると、日本語と英語のそれぞれの色の名前の範囲は実はぴった りと同じというわけではないことが分かる。英語で書かれた小説を読んでいるとよく orange cat"という言い方が出てくる。しかし、それは私たちの思い浮かべる鮮やか なオレンジ色を指しているわけではなく、少し赤みがかった薄茶色を指している。つま り、英語と日本語ではオレンジ色と茶色の境界が大きく異なっていて、日本語で「明るい 茶」や「ベージュ」は英語では"brown"ではなく"orange" の範疇に入るのだ。「青」と blue"も同様に、範囲は同じではない。私たちが「灰色」と呼ぶ、ほんの少しだけ青 みがかった色は英語では「ブルー」と見なされるようである。私は以前「ロシアンブルー」 という種類のネコを飼っていて、毛の色は「灰色」としか言いようがないのに、なぜ「ブ ルー」なのだろうと不思議に思っていたが、さまざまな言語話者の色の認識についての はんちゅう 研究をしている中で、英語をはじめとしてヨーロッパの言語では、紫や青みがかった灰 色も「ブルー」として見なされることを知ったのである。 このように言語は連続的で切れ目のない世界に対して線を引き、世界を切り分ける。 人は当然ながら無意識にそれぞれの母語の言葉での区切り方があたりまえて、最も自然 世界の分割の仕方だと思っている。しかし、言語によって線引きの仕方は多様だ。そ れにもかかわらず、母語と外国語で、一見対応する単語があるとつまり本来「面」て ある意味のどこかの「点」で二つの言語の単語の間に重なりがある時、その外国語の語が 「面」としても母語の語の意味と重なる、と考える思い込みは非常に根強い。塗り分けら れた概念の意味地図自体が母語での塗り分け方と同じだと思ってしまうからである。 「言葉を知る」ということは単語一つの意味を点として漠然と知るということではな く、その言葉を取り囲む他の単語との関係を理解し、それらの単語群が意味の地図の中 てどのように面として塗り分けられているかを知ることだ。言い換えれば、コミュニ ケーションを取るために言葉を「知る」ということは、意味の地図――これを語彙のシス テムと言ってもよいを持ち、その中で、それぞれの言葉の場所が面として分かると いうことなのである。 「音をすげ替え」 は、どういうことか。 -3-
言葉は世界を切り分ける

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