Senior High
3
化学

2023神戸大前期化学の分析と解説

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るーつ

るーつ

Senior High3

《全体分析》
試験時間60分 
理論1問、無機1問、有機2問の構成。論述問題が出題されなかった。聞き慣れない「理論分解電圧」が出題された。第3問(難)と第4問(易)のように難易度に差があった。解く順番を工夫して、精神的に安定した状態で問題を解こう。

《大問分析》
第1問 電気分解と理論分解電圧(普通)
本文にも書かれているようにAgClは沈殿で、イオンの数はゼロと考えるから電気分解は起こらない。
理論分解電圧とは『電気分解が起こるのに必要な最小の電圧』のことで発生•析出しやすいほど理論分解電圧は低い。

第2問 金属イオンの系統分離、溶解度積、結晶格子(普通)
溶解度積とは簡単に言えば『ほとんど溶けない塩のレアな陽イオンと陰イオンの積』のこと。金属イオンの系統分離で第ニ属は銅イオンが問われやすいが本問ではカドミウムイオンが問われた。新課程ではカドミウムのような12属元素も遷移元素に含めるようである。

第3問 環状エステルの構造決定(難)
4題の中で一番難しい。五員環構造をもつ化合物Aが環内にエステル結合とC=Cをもち、途中の加水分解でオゾン分解やケト•エノール平衡、トランス付加の知識が必要。

第4問 天然有機高分子化合物(易)
4題の中で一番簡単である。真っ先にこれを解いて残り3問を解く時間を確保しよう。
プラスチックのリサイクル手法は意外と答えられない受験生もいただろう。

ノートテキスト

ページ1:

2023 神戸大前期化学
Ⅰ 電気分解と理論分解電圧
問1了、「外部から供給された(外部から吸収した)
電気エネルギーは化学エネルギーに変換される」と
本文にあるので吸熱反応である。
イソウ、電気分解において陽極では酸化反応が、
陰極では還元反応が起こる。
よってA
問2 各物質の両極での反応は以下の通り。
塩化カリウム(KOlag)
陽:20→02+2e^
陰
: 2H2O+2e→H2+20H-
→両ちの電極からガスが発生①
・硫酸ナトリウム(Na2SO4ag)
陽:2H2O→O2+4H++4e-
陰:2H2O+2e-H2+2OH-
→両ちの電極からガスが発生①
塩化銅(CuClzag)
陽:2Clcl2+2e^
→
陰: Cut+ +2e-Cu
→片の電極のみからガスが発生 ②
塩化銀(ほとんど沈殿)
問2の問題文に「難溶性塩の水溶液中に
おいて、イオン濃度はゼロとみなしてよい」とある
ので、電気分解は起こらない。
→いずれの電極からもガスは発生しない。
硝酸銅(Cu(NO3)2a8)
陽: 2H2O→O2+4H++e^
陰: Cu²++2e-Cu
1/7
問3 純水に物質を添加し、電気分解した結果、pH=2
となったから、反応によりH+が発生したと考えられる。
グループ ①でH+が発生しているのは硫酸ナトリウム
(Na2SO4ag)の陽極である。
反応は2H2O Oz+4H +40
PH=2より[H+]=10×10-2[mok]
液量は100mLであるから水素イオンのモルは
1.0×10-2×1000=1.0×10-3[mol]
~の反応式の係数を比較して流れた電子のモルも
1.0×10-3m
3 mol
よってNa2SO4
1.0×10mol
問4 理論分解電圧とは、電気分解が起こるのに
必要な最小の電圧のことである。物質が発生
析出しやすい方が理論分解電圧は低くなる。
②グループの陽極ではC2,D2が発生するが、反応
式より Cz, O2を1mol 発生させるのに電子はそれぞれ
2mol.4mo|必要となる。よって
陽極:Oz,Clz
また②のグループの陰極ではCu,Agが発生するが
Cu, Agを1mol 発生させるのに電子はそれぞれ2mol.
mo|必要となる。よって
陰極:Cu.Ag
問5水酸化ナトリウムを純水に添加し電気分解した
とき各電極で起こる反応はそれぞれ
陽:40H→2H2O+O2+4e-
陰 2H2O +2H2+2OH-
求める時間を秒とすると、陽極の
反応式より
C
(+)
. Nh+
5.00
IH2O
OH-
→片の電極のみからガスが発生 ②
20.0xt
1,00
NaoHag
9.65×104×22.4
硝酸銀 (AgNO3ag)
流れた電子のモル
発生するD2のモル
陰: Ag++e Ag
陽: 2H2O→O2+4H++ 40
→
→片ちの電極のみからガスが発生 ②
112t=9.65×104t=861.6...
862秒

ページ2:

2/7
参考 電気分解・電気エネルギーを与えて強制的に酸化還元反応を起こすこと
① 陽極:直流電源の正極に接続した電極
電子を放出する反応(酸化)
② 陰極:直流電源の負極に接続した電極 電子を受け取る反応(還元)
電極の物質と溶液
内のイオン(水)を書い
① Step.1 陽極それ自身の反応を考える
S04
た図を書くと考えやすい!!
H2O Cu
(ア) 陽極が Pt, Au,c以外の金属のとき
CuSO4ag
・陽極が酸化(イオン化)される [例]Cu→Cu2+ +2e
(イ) 陽極がPt, Au,Cのとき(反応性に乏しい)
・極は酸化(イオン化)されない
Step.2 溶液内のイオン(水)の反応について考える
⇒ 陽極では基本的に陰イオンが酸化されて気体が発生する
[例]
20-Cl2+2e
すでに酸化されていて
[13797]
陰イオンがSO4, NO3のとき酸化されない
⇒2H2O→O2+4H++4e-
もうこれ以上酸化されない
(水が酸化されて酸素が発生)
②
陰極は電極それ自身の反応については考える必要がなく、 直接
溶液内のイオン(水)の反応について考える
⇒ 陰極で基本的に陽イオンが還元されて単体が生成する
Cu2+ +2e-Cu
[例]
[例] Na+
→Na
2H2O +2e^ H2+2OH
(水が還元されて水素が発生)
2H+ +2e- → H2
Naはイオン化傾向が
非常に大きいのでこの反
応は起こらない

ページ3:

II 金属イオンの系統分離、結晶格子
問1 PbCQ2の溶解平衡は
PbCl2(固) Pb2++ 200~
PbCl2が沈殿しなかったと仮定すると
[Pb2+] =
120×10-2
=1.00×102[mol/L]
120
実際にはPbCl2の沈殿があるため溶解平衡
となっており、
[Pb2+][Cl-]'= 1.00×10-4[mo13/[3]
[0]=5.00×10-1[mol]より
3/7
問23液 ②に含まれている金属イオンはPb2+と考えられる。
この液に希硫酸を加えると
Pb2++ SO42→PbSO4 ↓ (白色)
の反応が起こり、Pb2+が含まれていることを確認できる。
P6SO4,白
問33液 ③に含まれる鉄イオンはFe2+である。
3液①にH2Sを通じた時点でFe2+に還元されており、
・希硝酸を加えることで酸化されFe3+となっている。
[Pb2+] =
1.00×10-4
(5.00×10-12 =4.00×10[mol/L]
よって沈殿したPb2+の割合は
Fe2+と反応して濃青色沈殿(ターンブルブルー)をつくる
試薬はks [Fe(CN)6](ヘキサシアニド鉄(Ⅲ)酸カリウム
水溶液)である。 K3 [Fe(CN)6]
1.00×10-2-4.00×10 ×100=96.0[%] 問4 沈殿④は Fe(OH); (赤褐色)とAl(OH)(白色)が
含まれる。過剰のNaOH水と反応して錯イオンを形成するのは
96%
1,00×10-2
Al(OH)3で、この反応の化学反応式は
Al(OH)3+NaOH→Na[AlCOH)4]
問5 Cd2+はCu2+と同じように酸性条件でも硫化物
沈殿を形成する(液性によらず沈殿)。
化学反応式は
Cd+ + S2→cds↓(黄色)
AgCl+2NHs→[Ag(NH)]+ + cl
よって沈殿番号: ③化学式:CdS
色:黄色
問6 試料溶液に含まれる遷移元素の金属イオンは
Ag+, Fe3+ (cd2+)
新課程では12族元素も遷移元素に含まれるため、1
Cd2+を加えてもよいと思われる。
問7沈殿した金属イオンの塩の中でNH水と反応し、
錯イオンをつくって溶解するものは②のAgClである。
問8沈殿②はAgleで、NaClと同じ結晶構造より、1つの
単位格子当たり、4個のAgClを含む。 AgCl=Wc+WA,
単位格子の1辺の長さは2(Re+Ra)×10~ [cm] より
結晶格子の密度は
Wc+WA
6.02×1023×4
{2(R+RA)X10}
Wc+WA
-xxx
3.01×1023 ×8×CRc+RA×10-21
Wc + WA
12.04×102(Rc+RA)3
Wc+WA
1204 (RC+RA)3
[2/cm³]
塩化ナトリウムの
結晶構造

ページ4:

問3. 化合物A(ラクトン)を酸性条件で加水分解すると
化合物B
OH
A
■CH
加水分解
CH3-CH
"CH
へん酸性
c-o
CH=CH
CH3-CH-C-OH
=
CH3-CH-C-OH
CH3
6/7
CH₂-E-H H-C-CH-CH-C-OH
0
Bの構造式
0
0
Xの化学式
エノール型
ケト型
Cu2O
問4.
CH3
間5
A
CH3-CH
-C-OH
CH
CH3
1
K2Cr2O7 C
Ho-C
-CH2-CH-C.
-
OH
酸化
※
0
03,Zn
0
C-H
CH3-CH-C-OH
ヨ
K2Cr2O7
キー
*
1
酸化
HO-C-CH-C-OH
0
11
0
化合物D
0
"
H-C-OH
R2
ギ酸
03, Zn R₁
H
・R3
H
アルケンのオゾン分解
c=0 +0=c'
tozc-R
R3
問6 化合物Aと臭素を付加反応させることで得られる化合物Fは
H
CH
CH3-CH CH
Br2
-C-Br
.Br
CH3-CH
付加
①
Br
2
Br
CH3
CH3
A
CH
CH
CH
CH
五員環の平面とメチル基を固定すると、
①2つの-Br基がメチル基と同じ側
②メチル基に近い-Br基がメチル基と同じ側、
もう1つのBr基がメチル基と反対側
メチル基に近い~Br基がメチル基と反対側、
もう1つのBr基がメチル基と同じ側
④ 2つの-Br基がメチル基と反対側
・問ク化合物B~Fのうち、不斉炭素を有する化合物の記号は
B,C,D.F.
Br
④
Br
CH3
CH3
CH
CH
CH
CH
CH
C=0

ページ5:

IV 天然有機高分子化合物
問 多糖類 (C6Hlio Os)n
7/7
...
・デンプン(α-グルコースの縮合重合体)
アミロース ・直鎖状で熱湯に溶ける
6~7個のグルコースで1巻
のらせん構造をとる
・アミロペクチン...枝分かれをもち水に溶けない
枝分かれのあるらせん構造
・セルロース β-グルコースの縮合重合体で直線状構造
○酵素または酸によってグルコースになる
をとる
アミラーゼ
アミラーゼ
マルターゼ
デンプン
→ デキストリン
マルトース
α-グルコース
多糖
糖
単糖
セルロース
セルラーゼ
希硫酸
セロビアーゼ
セロビオース
β-グルコース
希硫酸
アミアミロース
オ:マルターゼ
らせん
カセルラーゼ キセロビオース
ウ:アミロペクチン エマルトース
問2還元性を示さない二糖としてはスクロース,
トレハロースなどが挙げられる。
| (2) (CoHi0Os)n=162, CH3CH2OH=46より
・スクロース、トレハロースなど
問3
81
162n
xnx2x46= =46g
(1) グルコースを用いたアルコール発酵の反応式は
C6H12O6→2CH CH2OH+ 2CO2
問4 セルロースは多数のβ-グルコースが縮合し、
B-1.4-グリコシド結合で連なった直線状構造
をしている。
クミグリコシド
ケン直線
問5プラスチックのリサイクル手法としては(1)マテリアル(株)リサイクル(2) サーマル(熱)リサイクル(3) ケミカル(化学)
リサイクルの3つがある。
(1) マテリアルリサイクル原料を融解するなどして再利用する。再生加工品にしたり、再生加工原料にする。
(2) ケミカルリサイクル・・・ 原料に熱や圧力を加えて、元の単量体に戻し、それから新しい樹脂をつくる。
(3) サーマルリサイクル
燃却した際に発生した熱を有効に利用する。ゴミ発電、地域冷暖房温水
プールなどに利用する他、原料を石油に戻したり、圧縮して
したり、ガス化して、それぞれ燃料として利用する。
して固形燃料に
マテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、ケミカルリサイクルのうちから2つ

ページ6:

硫化物の沈殿と液性の関係
硫化銅(Ⅱ) CuS (黒色)も硫化亜鉛ZnS (白色)も
難溶性の電解質であり、これらの飽和溶液では、次の
溶解平衡の状態にある。
CuS(固)
Cu^2++S2-
ZnS(固) 22++S2-
Cu2+とZm²+を含む酸性水溶液に硫化水素H2Sを
吹きこむと、Cusは沈殿し、ZnSは沈殿しない。
これは、Cusの溶解度積がZnSの溶解度積に比
べて極めて小さいことから、次のように説明される。
このため、[S2-]は小さく、[z+][s2-]<ZnSの
溶解度積となり、ZnSは沈殿しない。
しかし、Cusの溶解度積はきわめて小さい(下表)
ので、[Cu²+][s2] > CuSの溶解度積となり、
CuSは沈殿する。
中性や塩基性の水溶液では、[H+] が小さく、
H2Sの電離平衡が酸性の水溶液のときより
右辺にかたよる。このため [S2] が大きくなって、
[Z][s2] > ZnSの溶解度積となり
ZnSも沈殿する。
5/7
酸性水溶液中のH2Sの電離平衡は、酸のHの
ため左辺にかたよる。
H2S22H++S2-
Ⅲ. 環状エステルの構造決定
(18~25℃)
溶解度積 [mol]/[2]
-18
ZnS 2.2×10-
CuS 6.5×10-30
c. 炭素原子の検出
d. 水素原子の検出
硫黄原子の検出
問1.a塩素原子の検出(バイルシュタインテスト)
b.窒素原子の検出
不飽和度 =
2C+2-H-X+N
2.
CC原子の数 X:ハロゲン原子の数)
HiH原子の数 N:N原子の数
二重結合、環が1個あると不飽和度が1.
三重結合があると不飽和度が2増える。
炭素:
:C
水素d 酸素: f
問2Aの分子式はC5H6O2だから不飽和度は
以上のことからAの構造式を推定すると
2×5+2-6
b
=
2
//=
= 3
2
Aの分子式はC5H6O2で不飽和度は3
Aは不斉炭素原子を有する五員環の環状化合物
Aをオゾン分解するとギ酸が得られる
・Aは臭素と付加反応することから炭素間二重結合をもつ
・Aは酸性条件で加水分解されることからエステルである
CH
※
CH3-CH
CH
c-o

ページ7:

[参考2]
問8 金属イオンの系統分離
試料溶液: Ag+ Pb2+, Cat, Fe3+, Al3t
← 希塩酸を加える
4/7
沈殿 ①
·PbCl 2 ↓ (§), A œ ↓ (§)
熱水を加える
沈殿②
3液②
沈殿 ③
AgCl↓(白)
2+
Pb²
cds ↓(黄)
PbCl2は熱水
に溶ける
イオン化傾向がSnより
3液①
・Ca2+, Fe3+, Al3+
H2S (酸性)
3液③
Fe3+ Al3t
煮沸してH2S
HNO3を加える理由
硫化水素で還元されたF
小さい金属は、酸性条件でも
硫化物が沈殿
を追い出しHNO3
を加え
化して、もとのFe3+にもどすため
冷却後NH3水
十分
煮沸する理由
気体の溶解度は温度が
沈殿 ④
高くなると小さくなるため
AQ(OH)3 ↓(白) Fe(OH)3↓(赤褐)
3液④
硫化物は一般に
過剰NaOH水
HS (塩基性)
を加える
黒色沈殿
沈殿 ⑤
3液⑤
例外 ZnS(白), cdS (黄)
Fe(OH)3↓(赤)
MuS(赤)
[Al(OH)4] 沈殿 ⑥
(NH4) 2C03
を通じる
液⑥
Li K Ca Na Mg / Al Zn Fe Ni / Sn Pb H Cu Hg Ag Pt Au
水溶液を加える
沈殿しない
中・塩基性で 酸性でもいつでも沈殿
沈殿
沈殿 ⑦
3液⑦

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