(図53-3)。
一定期間の間に, DNAの塩基配列や
翻訳されない領域に突然変異
タンパク質のアミノ酸配列に蓄積される
変化の速度を分子進化の速度とすると,
アミノ酸配列は変化せず,形質も変化しない。
図3 形質に影響しない分子進化の例
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機能に影響を与えない配列に変化が生じ
た場合は,中立となるため蓄積しやすく、その速度は大きくなる。 一方、重要な機能
を担う配列に,形質に影響する変化が生じた場合, 生存に不利なものが自然選択によ
って残りにくくなるため, 分子進化の速度は小さくなる。
また、生存に有利に働くような変化では,分子進化の速度が大きくなるものもある。
たとえば,ヒトの免疫において,自己と非自己の識別に関わる分子の遺伝子である
MHC遺伝子では,抗原が結合する部分の構造に関わる遺伝子領域に非同義置換が起
きると,アミノ酸配列に多様性が生じ,結合・認識できる抗原の種類がふえる。認識
できる抗原の種類がふえると,生存に有利となるため、分子進化の速度が大きくなる。
| 52 第1章 生物の進化
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