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·15 細胞の構造と働き 生物の共通点の1つは,からだが細胞でできていることである。細
胞やその内部の構造は小さいため,顕微鏡を用いてはじめてその詳細な観察が可能になる。
1665年,フックは, 自作の顕微鏡でコルクの薄片を観察し,小さな部屋のように見え
る構造を見いだし,この構造を細胞「cell」と名づけた。実際にフックが観察したのは, 死
んだ植物細胞の細胞壁である。19世紀に入り,シュライデンとシュワンは「細胞は生物体
をつくる基本単位である」という細胞説を提唱した。
その後,顕微鏡の性能が向上し,また,細胞の内部構造を色素で染め分ける方法なども発
達した。このようにして細胞の中に存在する大小の細胞小器官が観察できるようになった
ものの,一般の光学顕微鏡ではミトコンドリア程度の大きさのものを見るのが限界である。
一方,20 世紀になり電子顕微鏡が開発され,。細胞内部のより微細な構造の観察が可能
になった。ルスカはこの業績によりノーベル賞を受賞した。現在では, 電子顕微鏡により
DNA やタンパク質などの分子の構造も観察できるようになった。
また今世紀に入り,オワンクラゲから GFP(緑色蛍光タンパク質)を発見した下村の功
績に対し,ノーベル賞が授与された。GFP を使うと,調べたい遺伝子の細胞内での働き
などを蛍光を指標に知ることができる。さらに2014年には, 光学顕微鏡がもつ分解能の
限界を打ち破る技術の開発に対しノーベル賞が授与された。このように顕微鏡に関する技
術革新は現在も進み,生命科学の進展に貢献している。
(1) 下線部A について, 識別できる2点間の最小距離を分解能とよぶ。
0 ヒトの眼,光学顕微鏡,電子顕微鏡の順に分解能をあらわした組み合わせで最も適
するものを,次のア~エから選び,記号を書け。
A
B
ア.0.01 mm, 0.02 um, 0.02 nm
ウ.1mm, 2 um, 2 nm
2 一般的な大きさが0.05~0.5umの範囲内にあるのは次のア~エのうちどれか。最
も適するものを選び, 記号を書け。
ア.ミドリムシ
(2) 下線部Bについて,次の文を読み,下の問いに答えよ。
真核細胞は核と細胞質に分けられ, 細胞膜により外界と区切られている。光学顕微鏡
で観察すると細胞質はほぼ均質に見えるが, 実際には種々の細胞小器官が細胞質に存在
している。。細胞小器官には膜で囲まれたものと囲まれていないものがあり, それぞれ
が固有の構造と機能をもっている。
0 原核細胞と真核細胞すべてに共通する性質を, 次のア~エからすべて選び, 記号を書け。
ア.細胞壁によっておおわれている。
ウ.ミトコンドリアで ATPを産生する。
記述下線部Cについて, 細胞内の代謝において, 細胞小器官が膜で囲まれること
の有利な点を考察し, 簡潔に説明せよ。
イ.0.1 mm, 0.2 um, 0.2 nm
エ. 10 mm, 20 pum, -20 nm
イ.大腸菌
ウ、葉緑体
エ.インフルエンザウイルス
イ.細胞質基質で化学反応が起きている。
エ.細胞膜を通して物質の輸送が行われる。
(2
→2-1, 2-4-~2-7, 3-7 (16 北海道大改)
Dヒント 15 (2)2 それぞれの細胞小器官には, その働きに特化した酵素が含まれている。