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75 植生遷移次の文を読み,下の問いに答えよ。
ある地域に生育する植物を個々の種や個体としてとらえるのではなく集団としてとらえ
るとき,それを植生とよぶ。この植物集団において,単独または複数種の生物が生育し,
その外観や構成種が他と区別できる場合,そのような集団を特にバイオームとよぶ。植生
はおもに,温度要因(年平均気温)や乾湿度要因(年降水量)に依存する。
日本は南北に長いので地域によって温度要因には大きな差が存在するが、全国的に降水
量は十分にあるので森林限界より上の地域を除き森林を形成しうる気候である。したがっ
て,バイオームは自然状態におかれていれば,その構成種や構造はある決まった方向へと
遷移し,やがて安定な極相とよばれる植生に達する。一般に垂直分布帯は極相を基準とし
て分類されている。ただし,現実にはその遷移の途中の段階にあたる途中相にあるものも
多い。そして,日本の中部地方において,途中相を形成する重要な優占種としてシラカン
バ,ダケカンバ, カラマツなどがあげられる。たとえば,中部地方の平地から山地帯上部
では途中相ではアカマツ林(陽樹)が優占種となることが多いが, カラマツは山地帯ではア
カマツと混ざり,さらに亜高山帯まで分布を広げている。つまり,途中相においては温度
による植生の分化が進まず,分布帯は細分化できない場合がある。
遷移の進行と共に優占種も変化する。このとき後に出現する優占種の方が,温度に対す
る適応範囲が狭いことが多い。さらに途中相にある場合には, 種間競争も加わることにな
る。したがって,極相に近づくにつれて細分化された分布帯になる。
(1) 照葉樹林のパイオームにおいて, 陽樹と陰樹の組み合わせとして適するものを,次の
アークから1つ選び, 記号を書け。
陽樹
陰樹
陽樹
陰樹
イ.落葉針葉樹-常緑針葉樹
エ.落葉針葉樹- 落葉広葉樹
(カ.落葉針葉樹-常緑広葉樹
ク.落葉針葉樹ー落葉針葉樹
ア.落葉広葉樹-常緑針葉樹
ウ.落葉広葉樹-落葉広葉樹
落葉広葉樹ー常緑広葉樹
キ,落葉広葉樹 - 落葉針葉樹
(2) 下線部について, その結果, 先駆種や極相を形成する植物種はどのような性質をもつ
と考えられるか。最も適するものを, 次のア~エから1つ選び, 記号を書け。
ア.先駆種ほど環境変化に対応する能力が高い。極相を形成する植物種は極相に近づく
ほど適応能力が低くなり, 環境の変化に対して弱い種となる。
イ.先駆種ほど環境変化に対応する能力が低い。極相を形成する植物種は極相に近づく
ほど適応能力が高くなり, 環境の変化に対して強い種となる。
ウ.先駆種ほど環境変化に対応する能力が高い。極相を形成する植物種は極相に近づく
ほど適応能力が低くなり, 害虫などの攻撃に対しては強い種となる。
エ.先駆種ほど短命である。極相を形成する植物種は極相に近づくほど寿命が長くなり。
種子の散布距離が大きい種が多くなる。
(3) 配述日本の陸上生態系においても, 森林に移行せずに草原が長い間維持されること
がある。どのような場合に草原が維持されるか。その例を3つあげ,それぞれ説明せよ。
3-1~8-5,4-2
4-3
(08 信州大,15 横浜国立大, 15 芝浦工業大改)