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こざいしょう
中納言は、中宮に仕える女房である小宰相の強引な誘いで、気乗りはしないものの、根合わせの左方に引き入れられた。
中納言、さこそ心に入らぬけしきなりしかど、その日になりて、えも言はぬ根ども引き具して参り給
B
へり。小宰相の局に先づおはして、「心幼く取り寄せ給ひしが心苦しさに、若々しき心地すれど、浅香
「(あなたが心幼く(私を仲間に引き入れなさったことの気の毒さに、
の沼をたづねて侍り。さりとも、負け給はじ」とあるぞ頼もしき。いつの間に思ひよりけることにか、
いくらなんでも、
言ひ過ぐすべくもあらず。
2
右の中将おはしたんなり。 「いづこや、いたう暮れぬ程ぞよからむ。 中納言はまだ参らせ給はぬにや」と、
まだきに挑ましげなるを、少将の君、「あなをこがまし。御前こそ、御声のみ高くておそかめれ。かれ
しののめ
は、東雲より入り居て、整へさせ給ふめり」など言ふほどにぞ、かたちより始めて、同じ人とも見えず
明け方
など言ううちに(中納言が現れたが)、
恥づかしげにて、「などとよ。この翁、ないたう挑み給ひそ。身も苦し」とて、歩み出で給へる。御
「どうしたというのか。
ひどく張り合いなさるな。
(ご自分で老人だと言う)
年の程ぞ二十に一、二ばかり余り給ふらむ。「さらば、とくし給へかし。見待らむ」とて、人々参り集ひたり。
うど
方人の殿上人、心々に取り出づる根のありさま、いづれもいづれも劣らず見ゆる中にも、左のは、
なほなまめかしき気さへ添ひてぞ、中納言のし出で給へる。合はせもて行くほどに、特にやならむと見
(左右の根を次々と)競い合わせ続けていくうちに、
ゆるを、左の、果てに取り出でられたる根ども、さらに心およぶべうもあらず。三位中将、いはむかた
なくまぼり居給へり。「左勝ちぬるなめり」と、万人のけしき、したり顔に心地よげなり。
こおりやま
しょうぶ
注
*浅香の沼・・・福島県郡山市にあったとされる。 菖蒲の名所で歌枕。
局・・・部屋。
*右の中将…右方の中将。後の「三位中将」も同じ。 *少将の君…右方に味方する女房。
*殿上人・・・殿上の間に昇殿を許された身分の人。
一 助動詞 二重傍線部A~Fの助動詞の活用形と意味を記せ。 助動詞でない
ものは解答欄に×と記せ。
完答2
*
A
D
いど
てんじゃうびと
形形
D
B
E
(2)
形 形
(3)
C
4点
問二 内容 傍線部1の解釈として最も適当なものを次から選べ。
ア 根合わせに参加することは、いつの間にか思いついたことのようである。
イ 浅香の沼で立派な根を探すとは、いつの間に思いついたことであろうか。
童心に返って根合わせを楽しもうと、いつの間に思いついたからであろうか。
エ 小宰相の局に立ち寄ることは、いつの間に思いついたことだというのか。
問三口語訳 傍線部2を口語訳せよ。
6点
問四口語訳
語訳 傍線部3を適当な語句を補って口語訳せよ。
6点
問五語句 波線部アイの意味として最も適当なものを、それぞれ次から選べ。
3点
アかたち
恥づかしげにて
表情 ② 雰囲気 ③背筋 ④ 容貌
こちらが気恥ずかしくなるほど立派な様子で
こちらがみっともなく思うほど愚かな様子で
こちらが驚きあきれるほど風流な様子で
こちらが気づかわしいほど照れくさそうな様子で
形 形
ものあわせ
物合・・・
に分かれて、様々な物事
の優劣を競う遊び。
審判を「戦者」、引き分けを「持」
という。
同じ組の味方を「方人」
ねあわせ
2
根合は
日の端午の節句に行
われ、菖蒲の根の長さを競う。
内裏や有力者の家などで、身分ある人々
が集まる催しとして物語によく描かれるの
うたあわせ
は歌合。ここでよい歌を披露できるのは名
誉なことであった。
物合の例
うたあわせ
歌合
かいあわせ
貝合
絵合
おうぎあわせ
扇合
たきものあわせ
薫物合
(薫物=香)
※「貝合」には、はまぐりの内側に絵を描いた
ものを並べ伏せて、もとの対の貝を当てる遊
びもある。これは物合とは違う遊戯なので注
意。多く、女性や子どもが楽しんだ。
問六 内容 傍線部4とあるが、中納言が自分自身をこのように言う意図として
最も適当なものを次から選べ。
4点
ア 自分が遅れたのは老齢のせいだと詫びることで、中将の怒りを鎮めるため。
イ 自分の方が年長者であると示して、無礼に息巻く中将を威圧するため。
けんそん
ウ 自分は年寄りだと謙遜することで、血気盛んな中将をなだめるため。
エ自分を卑下して見せることで、中将を油断させ根合わせを有利に運ぶため。
問七 内容 傍線部5とあるが、このときの中将の説明として最も適当なものを
次から選べ。
6点
ア左右とも優劣つけがたい白熱した勝負のなかで、たびたび出される優美
な根を見て、敵の健闘に感心している。
イ始終左方から圧倒的な差を見せつけられ続けて勝負が終わってしまい、
割り切れないむなしさを抱えている。
始めから左の方が優勢だと見えたものを巻き返したのに、最後はわずか
な差で負けてしまい、納得できずにいる。
エ互いにいい勝負だと思っていたのに、最後に想像もしなかったすばらし
い根で負けが確定し、呆然としている。
ぼうぜん
問八 助動詞 二重傍線部Gから助動詞を全て抜き出し、(例)にならって文法的
に説明せよ。
6点
(例) ありけり けり(過去・終止形)
uf
しじゅう
つど
・読解の手がかり
次の空欄を埋めよ。
あさか
.
あわせ
失敗を気に病んで
引きこもる人も...!?」
かたうど
3
たんこ
歌合… 互いに一首ずつ読んでいく