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1.2 解の存在と一意性
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1階常微分方程式
本章では微分方程式の中でも最も単純な1階常微分方程式の解き方を学ぶ、単
純とはいっても解がすぐに見つかるとは限らない。 比較的容易に解が得られる微
分方程式にはいくつかのタイプがあるので、それをみてみよう.これらの解法は
2階以上の、より複雑な微分方程式の解法の基礎でもある.
§1.1 微分方程式の階数
ェを変数とする未知関数をg(x)として
F(x,y,y,y',...) = 0
x, y(x), y(x) =
dy
dx'
d²y
y" (x) =
dx2,
から成る方程式:
(1.1)
を常微分方程式という. また, 導関数の微分回数を階数といい, 階導関数
y(n) = dmy/dr” が (1.1) の最高階数の導関数のとき, (1.1) をn 階常微分方
程式という.
たとえば,x軸上で力f (x) を受けて運動する質量mの質点の時刻での
座標x (t) は, よく知られているように,ニュートンの運動方程式
m = f(x)
dt²
(1.2)
に従う.これは変数がt, 未知関数がェ (t) の2階常微分方程式の例である.
他方,同じ問題を質点がポテンシャルV (x) の中を力学的エネルギーEで
運動しているとしてエネルギー保存則の立場で見ると,
d²x
+ V (x) = E
(1.3)
と表される.この式に含まれる導関数はdr/dt だけなので,これは1階常
微分方程式である。
[問題1] f(x)=-dV (x)/dr として,上の2式が等価であることを示せ.
ヒント:エネルギー保存則によりEは一定であることに注意し、 (1.3) の両辺を
で微分してみよ。)
本章では,最も階数の低い1階常微分方程式について学ぶ。
§1.2 解の存在と一意性
微分方程式の解の存在やその一意性などというと大変難しそうに聞こえる
が,これから見るように直観的にはそれほど難しいことではない. 1階常微
分方程式のもっとも一般的な形は (1.1)より
F(x,y,y)=0
(1.4)
と表される. これをの方程式と見なして, それについて解けるときには
dy
= f(x, y)
dr
(1.5)
と表される.この微分方程式は、 図1.1に示したように,その解y (x) があ
ったとして解曲線y= y (x) をry 平面上に描くと, 任意の点(x,y) でのこ
の曲線の接線の傾きがf(x,y) であることを意味する. したがって,(1.5)
を解いてy(x) を求めるというの
は, 曲線y=y(z) 上の点(x,y) で
その接線の傾きがちょうどf (x,y)
に等しいものを見出すことに相当す
る.
このことからまた, (1.5) を幾何
学的に解く方法も考えられる. ry
平面上の任意の点(x,y) f (x,y)
を計算し,その値を傾きとしてもつ
y
0
接線の傾き: f(x,y)
図 1.1
y=y(x)