(2) 2状態系の状態間の転移
ここで(1)で与えた運動法則にもとづいて, 古典力学ではみられない量子力
学特有の現象である状態間の転移について説明しておこう. いまある体系,例
えば水素原子を考えて,その系のハミルトニアンを自(0)とする.はじめこの
系が白(0)のある固有状態にあり,そこに外部からの何らかの作用が加えられ
ると,その系は他の固有状態に転移する. このとき,古典力学の場合には, 系
の初状態から終状態への転移の途中の過程を精細に追跡してゆくことができる
が,量子力学の場合には, 重ね合わせの原理によってそのような追跡は不可能
であり, われわれの知りえるのは, それらの状態間の転移確率だけである.い
ま,外部の作用をポテンシャル立で記述すると, これを含めた全系のハミル
トニアンは自=自(0)+立で与えられる.そして,このハミルトニアン自で記
述される全系の状態ベクトル |(t)>の時間的変動は,運動方程式(5.2)によ
って記述される. (5.4)では, I(は)>を自の固有状態で展開したが, ここで
はH(0)の固有べクトル|n>を用いて
1p(t)>= EIn>a,(t)
(5.14)
n
と展開する.その理由は, いまの目的が状態 ¢(t)>において, 系をH(0)の固
有状態| m>に発見する確率 |am (t)12を求めることにあるからである.(5.14)