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これが公用語、これが国語という明確な定義はまずありえません。あるとすればその国自身が憲法や法律などの法令で定めたり、主権者やその代表者が宣言するなどしなければならないだろうと思います。日本の場合こうした法令も宣言もありませんから、どちらも存在しないとの見方ができます。
しかし、事実上の公用語、事実上の国語というものはありうると思います。日本の憲法以下各種法令は全て漏れなくヤマトの日本語それも標準語と称される関東方言由来の言語で綴られ、公布されています。この事実は事実上の公用語といって支障ないと思います。しかし、広い広い意味で言えば、九州、関西、東京を中心に都道府県庁、市区町村役場が設置する看板や施設に英語・中国語・コリア語が表示されている点を勘案すればこれらは事実上の準公用語化してきているとの見方もできるのではないでしょうか。国語に関しては、学校教育の制度の下で法的に「国語」の名称が教科名に用いられており、これも事実上の国語の存在を否定できません。しかし、そこに含まれた漢文をどう考えるのか、古文をどう考えるのかなど詳細を検討すれば、本当に現代日本語（標準語）だけを「国語」と捉えるべきなのかどうかにも疑問が生じると思います。また、外国にルーツを持つ子どもたちを対象にした学校、アメリカンスクール、朝鮮学校、中華学校などのインターナショナルスクールで「国語」ではなく「日本語」という教科名として教育が実施されている事実は、国内に住する外国ルーツの日本人にも「国語」＝「日本語」という認知が共有されていなかったり意図的に忌避されている可能性もありますので、やはりこの問いに異論なく断言できる回答は存在しないものと考えます。
別建ての質問の方を見ていませんでしたが、気になる回答があったので私の認識を追加しておきたいと思います。
「国語」は特定の言語を他言語に対して優位に位置づけることをその国の主権が国家的に認める言語のことです。国旗とか国歌も同じです。これらも1999年に国旗・国歌法が制定されるまで、多くの人々に国旗・国歌と認知されているだけでした。他に類するものがない場合何か問題が生じるまで改めて法に定める意味がないために放置されるわけです。例えばマレーシアでは中国人の進出と活躍が目覚しく、ビジネス界を中心に中国語の共通語化が進む傾向があるなかで、マレー語が国語ですと定めることの必要性を感じたわけです。国旗・国歌法の時は高校の卒業式で日章旗を掲揚し、国家を斉唱せよとの行政指導とそれを阻止しようとした現場の教員・生徒との間で板挟みになった校長が自殺するという事件が社会的に注目されました。これをきっかけに野中広務官房長官が中心となって制定しました。後に私は野中自身に真意を問い詰めたことがありますが「掲揚すべきかいなか、拒否する現場に対して掲揚を強要するかいなか以前に、日章旗が国旗であるかいなかというのが現状で、あまりに揺らぎがありすぎて、本当に議論すべき掲揚の賛否についての議論が成り立たないので、二度と同じような犠牲者を出さないように、絶対に強要してはならないことを前提に国旗は日章旗、国歌は君が代と定めて大事な部分の議論を盛り上げたかった」と言っていました。国教は神道です。とは絶対できませんね。仏教お坊さんは激怒するでしょう。新興宗教の人たちも許してくれないでしょう。そして天皇は神だという論調で国民を戦争に巻き込んだ過去の国家神道を呼び起こすことにもなるので絶対に出来ません。同様に国語は日本語だとすることにもたいへん大きな問題が生じますので、そう簡単にはできません。そうした政治的なものなのです。
母語は自分の思考の基になっている言語、自分が最も自分の気持ちを言葉にして他に伝えやすい最優位の言語です。かつての日本人の感覚では１国１言語という認識が根底にあったので、「あなたの母語はなんですか？」という質問をしたいときに「あなたの国の言葉はなんですか？」と深い意味もなく聞いていました。１国に複数言語ということは頭になかったわけです。だから母語のことをかつて「母国語」と言っていました。90年代くらいから母語という表現に置き換えられてきたように記憶しています。
公用語はその国ないしは地方政府が公に用いる言語です。公用語が２つなら憲法も法律もすべて２言語で公布されます。
質問にありませんが、大半の人々の間で最もよく通用する言語は共通語といいます。