B
(思考
図1に示すように直交座標系を設定する。
初速度の無視できる電荷g (g>0),質量m
の陽子が,y軸上で小さな穴のある電極 a
の位置から電極 a b 間の電圧Vでy軸の
正の向きに加速され, z軸に垂直でy軸方
向の長さがしの平板電極c, d (z=±ん) か
らなる偏向部に入る。 c, d間にはz軸の
124. 〈電磁場中の荷電粒子の運動〉
x
偏向部
h
y
E
変位
d
図 1
正の向きに強さEの一様な電場 (電界)が加えられている。これらの装置は真空中にある。
電場は平板電極 c,dにはさまれた領域の外にはもれ出ておらず,ふちの近くでも電極に垂
直であるとし、地磁気および重力の影響は無視できるとする。
〔A〕 電極bの穴を通過した瞬間の陽子の速さvo を,V,g, m を用いて表せ。
〔B〕 その後,陽子は直進し,速さのままで偏向部に入る。
(1)陽子が電極 cに衝突することなく偏向部を出る場合,その瞬間のz 座標 (変位) 21 を
Vo,g, m, l,Eを用いて表せ。
(2)Eがある値Eより大きければ陽子は電極cに衝突し,小さければ衝突しない。その値
E を, V, l, んを用いて表せ。
〔C〕 陽子のかわりにα 粒子 (電荷 2g, 質量 4m) を用いて同じV,Eの値で実験を行った
ところ,偏向部を出る瞬間の座標 (変位) は 22 であった。 Z2を, 21 を用いて表せ。
[D] E の値をE1 に固定し, 電極 c d にはさまれた領域にx軸の正の向きに磁束密度B
(B>0) の一様な磁場 (磁界) を加え, 再び陽子を用いて実験した。
(1) Bをある値 B1 にしたところ,陽子は偏向部を直進し, 偏向部を通過するのに時間 T
を要した。 B1 と T1 を, Vo, E1, lを用いてそれぞれ表せ。
(2) Bをある値 B2 (0 <Bz <Bi) にしたところ, 陽子が偏向部を出る直前の座標 (変位) は
Z3 (230) であった。このときの陽子の速さを,g,m, V, E1, 23 を用いて表せ。
*(3) Bを 0<B<B, の範囲内で変化させて実験をくり返し, 陽子が偏向部を通過するのに
要する時間を測定した。 このとき, BとTの関係を表すグラフはどのようになるか。
図2の(ア)~(オ)の中から最も適当なものを1つ選べ。
T4
TA
(ア)
T₁
T4
TA
TA
(イ)
(ウ)
(エ)
(オ)
T1
T1
T1
T₁
10
B₁ B
0
B₁ B
B₁ B
0
B₁ B
0
B₁ B
図2
[東京大〕
質量mに付
つまり
22-21
[D] (1) B=B, のとき, 陽子は偏向部を直進しているので, 陽子が磁場から
受ける力(ローレンッカ) は静電気力とつりあっている。
E₁
z軸方向の力のつりあいより qE=qvoBi
よって B1=
Vo
また,通過時間 T は, y 軸方向に等速直線運動することより
1=voTi
よってT=-
Vo
O
放物線
qE1
O
Vo
B2
NavB₂
23
y
B=B2 のとき
(2) 陽子にはたらくローレンツ力は, 陽子の速度方向に対して常に
垂直にはたらく。 すなわち, 常に進行方向に垂直にはたらくので
ローレンツ力は陽子に対して仕事をしない。 したがって, 偏向部
で陽子になされる仕事は静電気力による仕事のみである。
W=F•s=qE123
エネルギーと仕事の関係より
2
2
2gE123
2
mvo2+gEz3=- mvi よって 12=002+
m
図㎝
[A]より²=20V であるからv=29(V+Eiza)
m
m
2g
よって、 速さ は V₁=
(V+E123)
m
(3) B=0 のときは、y軸方向に等速直線運動であったから,T= また
Vo
B=B1 のときも (1)よりT=Ti=2 となる。 つまり, B=0, B=B1 で
Vo
T=T1 となり,問題の図2(ウ) と(エ)は不適当である。 (ア), (イ), (オ)の違いを
考えるには, 0<B<B1 つまり (2) の問いで扱われた状況で, Tを評価す
ればよい。その際,ここで問題にしているのは偏向部を通過する時間Tで
あるから 速度のy軸方向の成分によって判断する。
0 <B<B のとき, 偏向部を通過するときの陽子の軌道は, yz平面で常
に正の傾きを有する。 このとき, 図 cからわかるように, 各瞬間にはたら
ローレンツ力のy軸方向の成分は必ず正になる。
ローレンツ力のy軸方向の成分により陽子はy軸の正の向きに加速度を
もつ。 すなわち, 陽子のy軸方向の速さが より大きくなるので,偏向部
を通過する時間は短くなる※B。 したがって(ア)
◆B 陽子のy軸方向の速
さは大きくなるが, ローレン
ツ力が陽子に仕事をするわけ
ではない。 ローレンツ力はy
軸方向には正の仕事をするが,
Z軸方向には負の仕事をし、
それらは打ち消しあう。