Undergraduate
数学

常微分方程式への電撃作戦その15

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哲治

哲治

解の整級数表示

ノートテキスト

ページ1:

常微分方程式への電撃作戦その15
第1章 解の整級数による表示
われわれが扱う多くの関数は、変数を複素数値として扱
うほうが自然であるようなものが多い. 多項式で定義され
る有理整関数 分数式で定義される有理関数, これらに根
号を付した無理関数,そのほか指数関数,対数関数,三角
関数など,いずれもそうである. これらの関数の性質の議
論は, 「複素関数論」 という分野において扱われるが,こ
れらの関数は,局所的に (すなわち1点のある近傍にお
いて) 整級数展開できる, という性質をもっている
整級数によって表される関数は, 1-1 で述べるように,
非常に性質がよく,その整級数の収束城内では、だいたい
どんな計算でも行うことができるので, A. 2-7 において
も述べたように,級数展開を利用して解を求めることがで
きる.
の
1-1 複素数の関数
[1] 指数関数
複素数 x = 2+ Si に対して,
ex = expxc=er(cos Stisis)
(1)
と定義する。
これから、次のことが確かめられる。
①実数xについて、
Qix = cosx + i smx, cosx= eacted
Sinx = eix e-ix
>
2
2i
②任意の複素数ついx2に対して
exp(x+x2)=expxi.expx
実際、
x1 = notisi
,
x2=12+iS2 とすれば、
expoti.expx2 = expii (cos Sit isinSi) expl2 (cosS,+isinS2)
=
exp (n+1){(Sicos Sa-SinS, SinSa)
+i(sinSicasS2 + cosSiShSa)}
exp(rth) { cos(Sits) +ism (Sitso)}

ページ2:

exp {(n+1)+i(S+S2)}=exp(x+2)
③ dixchは一般に複素数とするとき、(ん→0とはIh1→0のこととする)
lim ed(xth) - edec
h7o
h
ded
これから,xを一般に複素変数として、微分演算が実数の範囲での
計算と全く同じ形式で行えることとなる。
まずx=0の場合を考える。 h=ptigとすれば、
ch-1-h=ef (cosq+ising) - 1-P-ig
=ef (cosg-1)+(e-1-P)+ier(sing-8)+ig(eP-1)
ここで、1c088-118-8≦(マクローリン展)
また、IPI<1ならば
lep-1-P1 = 1/2 1-|Pl
)
10³-11=
1-1PI
であるから、
en-1-h
ef 181
h
2 Ihl
181 +
1 IPL IPL
ep
2 h 1-IPI
6
+ CP 12/21/18/2
+
IPL 181
h-P
となり、ん→0」したがって、P→08→0のとき、これは0となる。
ph-1
ゆえにっ
=
1
h70
h
一般の場合は
Im
h70
ed(xth) - edic
h
=
eah-1
ded
=deve
h70
よん

ページ3:

[2] 対数関数
指数関数が定義されたので、対数は
x =
er(cosstisins)
x=x+x2i
のとき、
logx = x + Si
argi
0
と定義されることになる。
21
図 C-1-1
ここで,er xの絶対値である。また、Sはx=iとして、
平面上に(x1)x2)を座標とする点をとるとき、ベクトルがx軸の正の
方向となす角であり、偏角とよばれる。
xの偏角は argsc と表される。したがって、
log x = log || + largx
(2)
ところで、jpがx軸となす角は2匹の整数倍の差でいろいろな値
をとり得る。したがって、(2)のように定義されたlogxは無限値の
関数で、その1つの値を (lagx)。とするとき、
である。
例
log x = (logx) + 2nπi (n= 0, 11, 12)
logxの1つの値としては、通常一π<argx≦πであるものとする。
log (-1) = πi, logi = 1 i >
log2i = log2+変え
logoは定義されない。
[3] 整級数で表された関数
整級数展開
xを実数とするとき、x=0のまわりのテイラー展開(マクローリン展開)に
よって、

ページ4:

ex= expx
= 1 + 1/1/17 x +
x+
2!
(3)
smx
n=0
=
x
1処(すべての父)
-
$7
11x3+
(-1) 224-1 (すべてのx)
(2-1)!
(4)
COSxC
-
2!
4!
228
(すべてのこ)
(5)
(6)
(2R)!
log (1+x) = x - x² + 23
=
00
E (-1)
6-1977
N=1
n
(1+x)=1+doct
8
och (bock 1) 0
2(2-1) x²+....
2!
Σ (d) x² (lk 1)
n=0
(x) = £(2-1X2-2)---- (2-7+1)
n!
であることは微分積分法で教えるところである。
(7)
塩
xを複素数値とするとき、右辺の級数は、やはり同じに表される範囲で
収束して、次の関数を定める。
そこで、複素数値父に対しては、左辺はこのようにして定義された関数
であると定める。

ページ5:

例(3)において,xにixを代入すれば、
i++ ..
pix
=
1 + + ix - 1/x² - 1/4x³
2!
5!
=(1-x+)+(メー/ポ+
- x4 - ...) + i (x - 13131 x 3³3
)
となり、これを(4),(5)の式と比較すれば、exx=cosotisinx
9
すなわち、(1)の関係は、複素数の関数としてのex,cosxsinxを上記の
ようにこれらの展開式から定義された関数と見れば、きわめて自然なもの
である。
整数の一般的性質
次の定理は、実変数の場合と全く同様であるので証明は省略し、
以下自由にこれを活用する。
定理1
整級数
1=0
cmxに対して、次のようなR≧O(も許す)がある。
この整級数は
1Rであるようなすべてのxについて絶対収束」
|>Rであるようなすべてのxについて収束しない。
Rを整級数の収束半径、集合{x:xkR}を収束域、または収束円という。
ROとし,O<<Rとすれば、整数は1=rで一様収束する。
整級数が、その収束域内で表す関数をf(x)とすれば、f(x)はC級
関数で、収束域内で」導関数f(x)は整数nCmxで表される。
くすなわち頂別微分ができる。)
整数は、その収束城内では絶対収束だから、項の順序の変更
などは自由に許される。

ページ6:

なお、Cn(x-x)”の形の整数を、Xを中心とした整級数
という。
N=0
次の定理は、1-2定理の証明のため必要とされるもので、既知と
するものであるが、後の必要上述べておく。
定理2
整級数 Caxが、ある2キロにおいて収束すれば、るとして、
(N= 0, 1, 2, ...) (8)
|G| ≤
M
Jn
であるようなMがある。
(証明)
n=o
Cnoは収束するから、limcnon=0。したがって、数列{C}
no
は有界である。 Cx≦M (n=0,1,2))とすれば(8) が成立
する。
実は、このMは、この整数がx=rで収束するとき、その表す関数を
M=Sup{1001: |x|≤7}
f(x)として
ととれるのであるが、この証明には複素関数論を用いねばならない。
収束半径を与える公式とし、次のものがある。
-1
R = (Im |cn| =
(コーシー・アダマールの公式)
定理3
2つの整数ne, ZCmに対して
N=O
n=0
|cn| = |Cr
Ical Ical
(n= 0. 1.2 ---)
であれば、は少なくとも
じゅの収束円内では収束する。
n=O
N=O

ページ7:

(証明)
n=0
Cnxの収束半径をR,とすれば、くくR1ならば定理2により」
Ichl≦MirinであるようなM1がある。|xckrならば、
M(笑)
| Cnxc| = |C| b ≤ M (1x1) (n = 0,1,2,...-)
であるから、Cmxは絶対収束する。したがって、xの収束
NED
半径RはRZ70<<Rを満たす任意の数だからっ
これより RERI
例1-1
任意の複素数xyに対し」(3)で定義された指数関数について
exty = exer
(解)
80
ex=2
1
n!
処
ey = {
N!
n=o
N=O
y”であるが、ここで右辺の級数は
-xh
ん!
絶対収束であるから、はらはらに乗じ、任意にくりなおしてよい。
ゆえに」
∞
ex. ey = ( ²² + 1
exey
h=0
k!
(4)
=
還
-xchge
h=0 f=0
h! k!
n!
n!
n=0
(n-k)!k!
xTk y k
宗教の影囲に制限してい
n!
(x+y)
n
=
exty
2
n=0
これによって,(1)がさらに自然なものとなる。

ページ8:

例1-2
x11ならば
exp (log (1+x)) = 1+x
=1+x
である。
(解)
この関係は、父が実数のときには知られていることであるが、Xが複素
数で、したがって整級数によって(3),(6)のようにして定義された関数の
ときにも成立するだろうか、ということである。
定理1によって、整級数は収東円内では多項式と同じようなつもりで
展開など自由にできるから、exp(log(x))を次のように計算できる。
exp(log(1+2c))
=
(-1)P-1
n
n!
P
7=0
P
=1++(1/2+1/x
++21(+)ナ
(9)
このようにしてやったのでは、一般項がどうなるかはわからないが、ともかく
8
n=0
cnxのように整級数の形で書ける。そして、これはXが実
ならば1+xに等しい。
ところで、この整級数によって表される関数をf(x)とすれば、f(x)を
定理1によって次々に微分してX=0 とおくと, n!Cn=f((o)である。
微分は複素数の範囲でできれば、それを実数の範囲に制限してやっ
ても同じことで,f*(o)は関数1+xに対してつくったものに同じである。
したがって、
ゆえに、
f(0)=1, f'(0) = 1, f()(0)=0 (n≧2)
Co=1, G1=1, Cn=0 (n≧2)
となり,(9)の整数は結局1+xであることが知られた。
8

ページ9:

1-2 級数解
次に述べる定理は、高階の方程式、あるいは常微分方程式系に対し
ても,B1-6で行なった方法によってベクトル形で議論することにより、
少し手直しをすれば全く同様に成り立つので、ここでは簡単のためxy
2変数の場合について示すことにする。
定理1
正規形 1階常微分方程式
y=F(x,y)
(1)
において、右辺の関数F(x)y)はx=xo, y=yoの近傍において
∞
F(x,y)=apg(x-2)(y-yo)&
(
P=0
の形に表される関数とする。
このとき,Xを中心とした収束半径が0でない整数
Ž Cr (x-xo)^
n=0
表される関数y() で、(1)の解であり,かつ
で
初期条件y()=yo, すなわち Co=yo
(4)
を満たすものが存在する。
初期条件(4)を満たす (1) の解で、整数で表されるものはただ1つ
しかない。
(証明)
ここで2変数の整級数が出てきたけれども、だいたいは1変数の場合
と同じなので証明の途中で必要なことを補なうこととする。
xxosy-yoをあらためてxyと考えれば、xo=0,yo=0として
さしつかえない。このとき,(2),(3) は
80
x
F(x,y)== arg yo
P8=0
(5)
C

ページ10:

Y (x) = Ž Cr xn
(6)
となる。これらを(1)に代入すれば、
8
Σ(n+1) Cotto
n
=
apgeep
Cmxn
n=o
P,8=0
m=1
xm) &
となる。 右辺を多項式と同じようなつもりでばらばらに計算し、xの
係数を比較すれば,(7)の右辺でxが出てくるのは、
pón, q≦n,m≦nのときしかあり得ないから、
(n+1) Cnt = Pr (app, C₁, C., Gr)
C2)
(n=0.1,...)
となる。
ここで、「nはapg(0≦p≦1,0≦g/n), C, Co. Cnをいくつか
掛け合わせたものに適当な0または正の整数を掛けて加えたものである。
たとえば、
C₁ = A00
(9)
2C2
=
alo + aoi Ci
3C3=azo+anc+aozcff+aor Ca
3
4C4 = A30 + a21 C₁ + A12 C₁² + A03 C₁ + All C₂ + 2 A02 C₁ C₂ + A01 C3
さて、apg はすべて与えられたものであり,(9)からC=aooであるから
(8)を帰納的に用いて,C2,C3を定めることができ、(6)の展開式
の係数が定められる。
これは全く形式的な計算であるが、このようにして実際に解が求まる
ことを次に示そう。
ただし、ここで、もし (1)が収束半径≠0の整級数で表される解(6)を
もつならば 1-1 定理により, Cnは上記のように決められることを
注意しておこう。 したがって,定理の最後の一意性もこれで主張されること
となる。
10

ページ11:

いま、(5)の整級数は1xcl≦r,剛で収束するとすれば、
1-1 [3]定理2におけるのと同様に、適当なMをとれば、
lapg|≦
M
(P.8=0.1.2)
(10)
FP p&
である。
Apg
M
=
(P.8=0,1.2...)
(11)
JP på
とおいて,関数
00
Fr(y) =
広ApgxPy8=MZ (予)(光)
=
P8=0
M(1号)(1部)
Pg=0
-1
(12)
を用いて、微分方程式
y = F₁ (sc, y)
を考える。
(13)
(1) に対して (6)の形の解を考えたと同様に」(13)に対して
Y(x)=2cmx
(14)
の形の解を考えるならば、(8) におけるのと同じ多項式尻を用いて
(15)
(n+1) Cn+1 = Pn (Apq, C₁, C₂ (n)
が成立する。
いっぽう, (13) は F(x,y)の(12)の形から変数分離形であり、その解
は容易に求まり」(Y(0)=0に注意),
Yax) = p{1-(1+210g(1-^)) } (8)
(16)
この関数は
247
(1)11
がともに満たされる範囲KKR (R=2(1-exp(-))となる。)
では、

ページ12:

1-1[3]定理1により, たしかに(14)のように整数に展開される。
(14)において,C1=Aoo=M70 そしてPが0または正の整数を
係数にもつ多項式であったことから
が知られる。
Cn >0 (N= 1.2...)
また、同じくPが0または正の整数を係数にもつ多項式であった
ことと,
Icil = 1aool = |f(0,0)|≦M=Aoo=C1
1 app 1 = App
および
から(→(10)(11)),順次
(n+1)/Cntil = 1Pn (apg) (1)(2),
C₁ --- (n) |
=Pn(lapg1, Icil, I.....水ml)
›
--
, |cn|)
± Pn (Apg C₁, C₂, (n)
= (n+1) Cr+l
Catt
として,
(n=1,2,...)
(17)
が知られる。
|cn| = |cn|
n=1
以上により。形式的に係数を計算してつくった整級数と、
実際に収束することが知られている整級数Σcnxの間に」(13)
関係があることが知られたから、1-1[3]定理ろによりCnxの
収束半径は0でない。
n=1
したがって、その収束円内では、1-1[3]定理により、上記の計算
はすべて正当で、したがって、このようにして求める解が得られることに
なる。ロ

ページ13:

《注意》
B1-2 [2]定理の証明における逐次近似法は、今の場合にも全く
そのままあてはまる。(もっとも、それを正当なものと理解するためには、
関数論の知論が必要である。)
そして、それによって、同様に、F(ocy)が
x-xolly-yopで1F(xy))=M
であれば、
P = min{}, }として、とこ
で解が存在
する。あるいは、解の整数は少なくとも1-201≦において収束
すると主張できる。
定理2
パラメーター入を含んだ 1階常微分方程式
y=F(x,y,x)
(18)
において,F(x,y,x)は、x=xo,y=yo, x=2の近傍において
00
F(x,y,x)=apes(x-xo) (y-yo)ρ(スース)
P18.5=0
の形に表される関数とする。このとき、
初期条件 x=xのとき y=yo
を満たす(H)の解をy=(xa)とすれば,y(xa)はx=x入=入の
近傍において,
y(x,2) = I Cmm (x-x)" (2-20)
(19)
nm=0
の形に表すことができる。
(証明)
定理の証明中、(6)を
として
zm
00
00
I Cnn x² 2m² = E ( Z Cnn 2 th ) 2"
num=0
n=1 m=0
13

ページ14:

C=Cmmと考え、以下の証明を同様に行えばよい。
m=0
詳細は省略する。
例1-3
x,yoが実数で,F(x,y)の展開(2)の係数がすべて実数ならば」
F(x,y) は xyの実数値に対して実数値の関数となり、B1-2[2]定理1
によって解の存在が知られる。
このとき、そのように考えても、解は上記定理の方法によって得られた
ものしかない。すなわち、定理1では解で整数で表されるものが
ただ1つしかないことを主張しているが、実関数として解はC級の関数
と考えても、やはり解の一意性が成立することを示せ。
(解)
整級数で表される関数は微分可能で、導関数はやはり整額数で
表される(→1-1[3]定理1)。
そしてそれは連続関数だから、F(x,y)に対してyに関してリフシッツ
条件が満たされることになるからである。

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