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国語総合・国語表現Ⅰ
翻訳
次の [A]、[B] の文章を読んで、後の問いに答えなさい。
「世界でいちばん薄い本。イギリスの料理本、日本のジョーク本。表紙をめくると、もう
⑥ 奥付」という、欧米人がよく口にするジョークがあります。 イギリスの方には申し訳ないが、「イギ
リスの料理本」は説得力があります。 イギリス料理は
ま
ず
い
と
いうのが定評。
そ
の
証拠
に、
ヨー
ロッパ
ペ
イ
ン
料
日
本
に
も
た
くさんあ
ります
の料理に限っても、イタリア 料理、フランス料理、 ス 理 などの店は
が、イギリス料理店というのはついぞ見かけたことがありません。
一方、「日本のジョーク本」はどうでしょうか? 日本人としては⑦クヤしいけれども、反論しにく
いところがあります。
「ジョーク本」というのがあまりない。あっても多くは欧米のジョー
ク集の① ホンヤクです。欧米の書店にはたいてい 「HUMOR」というコーナーがあって、ジョーク集が
ぎっしり並んでいますが、日本の書店にはそんなコーナーはありません。そこに並べるジョーク本がな
いのだから、設置しようがないのです。
あ
教養ある欧米人には、頭のなかにお気に入りのジョークをいくつか常備しておいて、機会があると、
「こんなの知ってる?」とか「最近いいのない ?」などとジョークの交換をする慣習がありますが、日
本人にはありません。パーティ好きな欧米人は、パーティで順々に立ってスピーチをしますが、スピー
チにはジョークを入れてみんなを笑わせるのが礼儀。そんなときジョーク本が活用されるわけです。 宴
会好きでは日本人も負けませんが、スピーチするのはごくわずかな人だけだし、そのスピーチも切れ味
のいいジョークでスパッとしめられる人は少ないですね。
欧米人の多くはさほど親しくなくとも、というか相手との距離を縮めて親しくなろうとして、挨拶の
言葉に気軽に冗談をまじえてきますが、日本人は冗談をかわすのを親しい仲に限定する傾向が強く、親
しくもない人にいきなり冗談を言うなどもってのほか、言葉少なく控えめに接するのが礼儀だと考えま
す。ジョークからほど遠い「無口でまじめな日本人」のイメージの起源です。
日本人のハンディはさらに続きます。 欧米流のジョークは「滑稽な驚きをよびおこす言葉で終わる
ごく短いフィクション」と定義されます。この「フィクション」というところがミソ。 少なくとも現代
の日本人は笑い話に関して、フィクションよりもはるかに実話を好むのです。 「わざとらしいもの」や
「つくりもの」をあまり好まないうえ、頭をひねって
おかしい話を考えなくたって実生活の
中におかしいことはいっぱいあるので、ジョークが敬遠されがちなのです。
こうしてみると、日本人はジョークを言わないんじゃないかと思われても無理はないような気がして
きます。ところが
江戸時代に目を向けると、事情は一変します。 ジョークは日本語では
「小噺」と訳すのが え ですが、江戸時代には何百種類もの小噺本が出版され、A□種多□な
小噺が(a) □口に膾炙していました。日本は多くの民衆が小噺を日常のたしなみとする世界有数のジ
ヨーク大国だったのです。 そして江戸期には、これを背景にして、たくさんの小噺を複合して長大なジ
ョークを組み立てて話す話芸が発達しました。 そうです、 (b) 世界に口たるジョーク芸、落語がそれ
です。日本にはジョークがないどころではありません。日本には世界一の伝統的なジョーク芸があるの
です。故・桂枝雀師匠が(c) 口破口を切り開いた英語落語がいま大きく成長しつつありますが、もっ
ともっと盛んになって、日本が独特なジョーク大国であることを世界中に知らしめてほしいものです。
落語や小噺だけではありません。江戸時代の民衆は お 脱力系の笑い好きな性格だったようで、