ベンゼンの水素原子の1つがヒドロキシ基に置換されたフェノールは,工業的には
大部分がベンゼンとプロピレンを原料とした
法により合成される。 フェ
ノールはアルコールとしての性質をもつため, ナトリウムと反応するとAを生じ,
①
また、無水酢酸と反応させるとBが生成する。 しかし, フェノールは, メタノール
やエタノールなどのアルコールとは大きく異なり,酸としての性質ももつ。 また,
フェノールのベンゼン環の水素原子は,ヒドロキシ基の効果により著しく置換されや
すくなっている。例えば、フェノールに臭素水を加えると,1つの臭素原子との置換
では止まらず、3つの水素原子が臭素原子に置換された化合物 C を生じる。 A の場
合には,フェノールよりもさらに置換反応がおこりやすくなっており,この性質を利
用してAからサリチル酸が合成されている。 置換反応がおこる位置も重要である。
化合物Cの構造から, フェノールの臭素化はヒドロキシ基の (1)
Caus
O
(ウ)位でおこりやすいことがわかる。 この傾向は, フェノールとホルムアルデ
重合でも見られる。 この場合、 まず (1)
ヒドとの酸触媒を用いた
位
位と
で反応が進行して高分子 D が生成し、これに硬化剤を加えて加熱することにより,
位で結合した (オ) 構造をもつフェノール樹脂が生成する。 この樹脂
は電気絶縁性材料として広く用いられている。