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★★ 第15問 遺伝子操作に関する次の文章を読み、下の問い (問1~5)に答えよ。
5 〕(配点 15)
[解答番号 1
遺伝子の組換えには,DNAを切断する「はさみ」として制限酵素, DNA 断片を
つなぎ合わせる 「のり」としてDNA ア が用いられる。 制限酵素は, DNA を
特定の塩基配列の部位で切断する酵素で、このなかには図1のEco RV のように二
本の鎖をそろって切断する酵素もあるが, Bam H のように、片方の鎖がヌクレオ
チド数個分だけ長い断面(これを付着末端とよぶ) をつくるように切断する酵素もあ
る。後者のような酵素で切断したDNA 断片では,塩基配列が相補的な付着末端を
もった断片どうしを適切な条件下におけば結合するため, DNA アを利用し
て容易につなぎ合わせることができる。
Eco RV
5′-G-A-T+A-T-C-3' [切断
3-C-T-A+T-A-G-5'
Bam HI
5′-G+G-A-T-C-C-3
3-C-C-T-A-G+G-5
切断
5'-G-A-T A-T-C-3'
3-C-T-A T-A-G-5'
5'-G
+
3'-C-C-T-A-G
-92-
+
G-A-T-C-C-3'
G-5'
図 1
組換えた遺伝子 DNA は, 大腸菌などに導入し, 複製や発現を行わせることがで
きる。 大腸菌に特定の遺伝子を導入する場合, イ とよばれる 「運び屋」 が利用
される。 この代表例はプラスミドとよばれる小形の環状DNA で,細菌などに感染
すると, 宿主によって複製され,またプラスミドにある遺伝子が発現する。 遺伝子
操作に用いられるプラスミドは、人工的に改変されたもので, プラスミドが導入さ
れた大腸菌を容易に選別できるよう抗生物質耐性 (図では, X耐性・耐性として
示している)などの遺伝子が含まれており, また複数種の制限酵素で切断できる部
位がある。
以下の手順で、図2に示すプラスミドを用い, 図3に示す DNA 断片を大腸菌に
導入する実験を行った。 なお, 用いたプラスミドは全長約4.4kbp (1kbp は 1000
ヌクレオチド対) の DNAからなり, そのなかに2種の抗生物質(XとYとする)に
対する耐性遺伝子を含んでいる。 通常の大腸菌は抗生物質存在下では生育できない
が、抗生物質耐性遺伝子は、抗生物質存在下での生育を可能にするはたらきがある。
i) プラスミドに組み込む DNA 断片の準備
(a)
図3のDNAから, Bam HIともう一種類の制限酵素を用いて目標の
断片を切り出した。
ii) プラスミドを切り開く
図2のプラスミドを Bam H で処理し、特定部位を切り開いた。
道) DNA 断片とプラスミドの接合
……… i で得たDNA 断片 (全長1.4kbp) と iiのプラスミドを混合した後,
DNA
アで処理し, つなぎ合わせた。
iv) 大腸菌への導入
2kbp
道の処理を行った多数のプラスミドと大腸菌を適切な塩類溶液中におく
ことで, 大腸菌にプラスミドの取り込みを促した。
v) 大腸菌の選択
ivの処理を行った大腸菌を通常の培地および抗生物質XまたはYを
(b) [-]
添加した培地で培養し, 遺伝子の導入が成功した大腸菌だけを選択して
培養し,増殖させた。
酵素2切断部位
X耐性
0.8 kbp
Y耐性
Bam HI
切断部位
図2 プラスミド
1.6kbp
酵素 Z切断部位
DNA
-93-
Bam HI
切断部位
酵素Z
切断部位
1.2kbp
導入したい部域
1.4 kbp
図 3
遺伝子の発現