問五次に掲げるのは、二重傍線部「「下行く水の」と、いとほし」に関して、生徒と教師が交わした授業中の
会話である。会話中にあらわれる和歌や、それを踏まえる二重傍線部の解釈として、会話の後に生徒から出
された発言 ①~⑤のうち、適当でないものを二つ選べ。 ただし、解答の順序は問わない。(各5点)
生徒 「下行く水の」だけでは、何のことかわからないのですが、どう考えたらよいでしょうか。
ろくじょう
教師 この「下行く水の」は「古今和歌六帖』の「心には下行く水のわきかへり言はで思ふぞ言ふにまされ
る」に基づいた表現だから、 この歌を知らないと理解できないね。
生徒 有名な和歌の一部を引用して、人物の心情を説明する、いわゆる「引き歌」の技法ですね。
教師 その通りです。さらに、この歌の注釈書には
みかど
みち
いはて
こぼり
たか
たま
この歌、大和物語に、奈良の帝、陸奥の国磐手の郡より奉れる鷹のそれたるを、悲しみ給ひて詠ま
せ給へる御歌に、心には下行く水のといふ上の句をそへたり
とあります。
『大和物語』は歌物語だから歌の由来を説明しているということだね。
以上を踏まえて、『古今和歌六帖』の和歌と『枕草子』の記述について、意見を出し合ってみよう。
生徒A ―― 元は「言はで思ふぞ言ふにまされる」だけだったということは、この下の句にこそ帝の心
情が表現されているということですね。