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サン=ステファノ条約でロシアが保護国化したブルガリアは、今の地図にあるような小国ではなく、マケドニアやギリシアの一部を含む大ブルガリアであり、地中海に面していました。ついでにサン=ステファノ条約ではルーマニア、セルビア、モンテネグロが独立しています。こういった取り決めがイギリスとオーストリアそれぞれにとってどう問題なのかというと・・・
○イギリスの事情
そもそもロシアの南下を防ぐのは、イギリスからインドまでを結ぶ航路の安全を守りたかったからです。大ブルガリアがロシアの保護国となり、ロシア軍の港が地中海にできてしまえば、エジプト・トルコ戦争でエジプトに嫌われてオスマン帝国に味方してまでボスフォラス海峡・ダーダネルス海峡のロシア軍による通航権を認めさせなかったことや、クリミア戦争後のパリ条約で黒海を中立化したことが、すべて無意味になってしまいます。なんとしてもロシアの地中海進出は阻止しなければなりません。
○オーストリアの事情
そもそもオーストリアは周辺をプロイセンとロシアに囲まれており、進出する先は南のバルカン半島しかないので、かねてよりバルカン半島を狙っていました。そこにロシアがルーマニア、セルビア、モンテネグロというスラヴ人国家を樹立させ、さらにブルガリアを保護国化しました。これはオーストリアのバルカン半島進出を妨害する行為であるばかりか、オーストリア国内のスラヴ人とドイツ系住民の民族対立にも飛び火しかねない行動です。絶対に認めるわけにはいきませんでした。
このように、イギリスとオーストリアは別々の事情でサン=ステファノ条約に強硬に反対しました。両国ともに、ものすごく不都合があったわけです。