発達心理学

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hinata

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気が向いたので。大学の講義ノートです。

ノートテキスト

ページ1:

第2回 発達の生物学的基礎
出生状況から分類
・就巣性:妊娠期間が短く、未熟な状態で生まれる。
・離巣性:妊娠期間が長く、体もや運動能力が備わって生まれる。
*人間は、生理的早産である。
⇒霊長類で妊娠期間が長く、出生数も少ない点は離巣性だが、出生
時の状態が未熟な点は京巣性。
発達の2つの次元におけるアプローチ
・個体発生:個々の人間または動物の発達。 〈シクロフ
・系統発生:種の進化、下等動物から人間までの発達。〈マクロ>
発達は何によって促されるか(1)
<遺伝論>
―ゴールトン
優秀家系の近親者間の類似性を統計的に分析し、人間の能力発
達にとって、遺伝は環境よりはるかに重要であるとした。
-ゲゼルとトンプソン
1対の一卵性双生児を使って、階段登りについて訓練の効果を調べた
ところ、訓練を受けなかった子供もすぐに登れるようになった。
<環境論>
ワトソン
成熟した人間や動物の行動は、すべての生得的な素質とは無関係
に、生後の学習や経験によって形成されたものであるとした。
-スキールズとダイ
13人の精神遅滞の乳幼児を養護施設から精神遅滞の女が
いる寮に移したところ、IQが上昇した。
●初期経験
発達の初期における子どもの心身の発達にかなりの不可逆的な影響を
及ぼすような経験
ローレンツ
ハイイロガンのヒナは卵化後最初に見た「動くもの」を母親とみ
なし、それについてまわる。孵化後36時間以内にしか起こらない。
⇒刷り込み [imprinting]

ページ2:

外界の刺激に対する感受性が高い時期。
●臨界期
一定の年齢までに獲得しないとその後は獲得が難しい時期。
cf. 敏感期
●発達は何によって促されるか(2)
<輻輳説>
人の発達は遺伝と環境の組み合わせによって決まるという考え方。
シュテルン
20%
環境
発達=遺伝+環境
性質
A
ルクセンブルガー
能力
80%
輻輳説を右図で説明した。
遺伝
<環境閾値説>
ある遺伝的要素が発現するためには、最低限の環境が必要である
という考え方。
ジェンセン
<相互作用説>
遺伝的要因と環境的要因は、相互に作用して掛け合わさって乗算的に影
響するという考え方。
発達=遺伝×環境
バルテス
遺伝と環境とのかかわりをマクロな視点から捉えた。
*人の発達に影響を与える3つの要因
1.年齢・成熟的要因(遺伝)
2.世代文化的要因(環境)
3.個人的要因(環境)
⇒3つの要因が相互に関連しあって発達に影響を及ぼす。
発達段階によって影響の大きさが異なる。
●行動遺伝学
個人間の行動上の差異を生み出す遺伝的要因と環境的要因につい
て研究する領域。主に双生児法を用いる。
第1原則ヒトの行動特性はすべて遺伝的である。
第2原則同じ家族で育てられた影響は遺伝の影響より小さい。
第3原則複雑なヒトの行動特性のばらつきは説明できない部分が多い。

ページ3:

第3回 乳幼児期の外界認知の発達
●出生前期の感覚
触覚→平衡感覚→臭覚・味覚 聴覚 視覚
10
15
16
20
26
(週)
◎感覚間知覚
ある感覚で得た知覚情報が他の感覚での知覚に反映される。
乳児期の感覚・知覚の発達
<視覚>
-1か月児の視力は成人の約4分の1
-2~3か月児になると基本色を区別
<聴覚>
一生得的に備わっている
一音が混ざり合って混沌としている
<味覚><嗅覚><触覚>
生後すぐに反応を示す
○馴化-脱馴化法
特定の刺激を何回も提示し、赤ちゃんが飽きてその刺激を見なくなったら、
別の刺激を提示し、慣れてしまった刺激と別の刺激を弁別できるかを
確かめる方法。
●両眼網膜像差
右目と左目に入る映像の違いを手がかりに奥行のある3次元空間を見るこ
とができる。生後3~4か月頃から利用可能。
●選好注視法
調べたい2つの刺激を並べて、頻度や注視時間を測定する方法。
○ルピアジェの理論
・適応:同化と調節を繰り返す過程。
・同化:新情報を自らの枠組みに合わせて変化する。
-調節:新情報に合わせて枠組みを変更する。
・体制化:適応を通じて獲得してきた認識の枠組みが結びつき、1つ
の機能的なまとまりになること。
<感覚運動期>0-2歳
・対象の永続性に気づくようになる。

ページ4:

<前操作期>2-7歳
思考は自己中心的である。
象徴作用が現れる。
<具体的操作期>7-11歳
・自己中心性を脱する。
保存性を習得し、可逆的操作を行う。
<形式的操作期>11歳-
仮説繹的思考ができるようになる。
○ヴィゴツキーの理論
社会、文化、歴史を構成する他者の影響が子供も発達に重要。
・発達の最近接領域に関する理論
(1)子供の現在の発達水準
ひとりでできる。
1の水準2の水準
最近接領域
他者の助けがあればできる。
(2)発達しつつある水準
思考の道具としての言語
第4回アタッチメントの発達
●基本的信頼
自分のそばにいる養育者が、自分を保護し、助け、必要なときに必要なかかわりをして
くれると思えること。
乳児期:基本的信頼対不信
○アタッチメント
人が特定の他者との間に築く緊密な情緒的結びつき。
・ボウルビィ
子どもの発達上の問題の原因と"maternal deprivation" 「母性的養育の剥奪」
であると考え、アタッチメントの概念を提唱した。
アタッチメント対象である大人と安全基地として利用できるかどうか。
<内的作業モデル>
アタッチメント対象との相互作用によって個人に内在化される。自己およびアタッ
チメント対象に関する心的表象モデル。
(1) 自己に関するモデルアタッチメント対象にとって自分は大事な存在。

ページ5:

(2)他者に関するモデル:アタッチメント対象は自分を守ってくれる。
分離不安
アタッチメント対象から身体的に離れたり、姿が見えなくなるときに子どもが
感じる不安や恐れ。
一移行対象
アタッチメント対象からの分離を予測して不安を感じる際に、気持ちを落ち着
かせるといった感情調整を支えるもの。
・エインスワース
<ストレンジ・シチュエーション法>
子どものアタッチメントタイプを分類する測定方法。
Aタイプ(回避型)
Bタイプ(安定型)
Cタイプ(アンビバレント型)
Dタイプ(無秩序無方向型)
・アタッチメントの個人差の背景
一気質
子どもが生得的にもつ、行動や情緒的反応、表出にみられる特徴。
一敏感性
親が敏感な応答性をもつことが、子どもの安定したアタッチメントの形成
を促す。
第5回認知発達と心の理論
●ピアジェの発達理論
―シェマ:外界の事物・事象を理解する際に用いられる一定の枠組み。
一同化:外界の事物・事象を自分のシュマに合うように取り入れること。
・調節:外界の事物・事象に適するように自分のシェマをつくり変えること。
一均衡化:シュマの同化と調節が繰り返されること。
◎前操作期
[象徴的思考段階] 2.4歳
-自他が区別されていない傾向にある。
相貌的知覚:ただの物体に表情や感情を見出す。
アニミズム:無生物でも心や生命があると考える。

ページ6:

一人工論外界の自然現象もすべて人間が作ったと考える。
-実念論:夢や思考のような主観的なものが実在する。
[直観的思考段階] 4-7歳
・未だ自己中心性や事物の知覚的に目立つ特徴に左右されやすい。
-三つ山の問題
14~7歳→自己中心性
17歳頃~→脱中心化
○具体的操作期
[第1段階]小学校低学年
-保存課題
見かけに左右されてよくなる。
[第2段階]小学校中学年
-メタ認知が発達する、どこがわからてんいかがわかる。
一空間認知に顕著な発達がみられる。
―思考の計画性が発達する。
○形式的操作期
-仮定に基づいて論理的推論を行う。
〇心の理論
人の行動の背後に「心」が存在することを理解できる個体がもつ。
誤信念課題で調べる。ex)サリーとアンの課題
→4歳頃からあらわれる。
/一次的信念:サリーの誤信念を予測できる。
二次的信念:対象児が「サリーはかごの中にビー玉がある」と信じて
いると考えられる。
第6回 思考と言葉の発達
●言語の必要性
/外言:伝達手段として有用。
内容:思考の道具となっている。
言語発達の様相
-叫喚者(出生直後):生後すぐの泣き声。
-クーイング(2~4か月):「くーくー」という音を表出。

ページ7:

-喃語(4~6か月):「あーあーあー」という切れ目のない発声
-基準喃語(6か月~):「ばばば」という複数音節からなる子音と母音が
区別された発声。
一初語(1歳頃):初めて発する意味のある単語。
→一語文・二語文・三語文多語文
命名期(たた期、2歳頃)
一質問期(ナゼナゼ期:3歳頃)
○幼児期の言語発達の特徴
・ピアジェ「幼児の自発的発話の中には他者への伝達を目的としないもの
が存在する」
・非社会的言語:他者への伝達意図がない発言。
自己中心的言語:自分自身に向けられた言語。
内容の初期形であり、発達とともに減少する。
一非言語的要素:表情やジェスチャーなど。3歳頃まで依存。
/一次的ことば、具体的事象について、親しい人と一対一の直接対話によって
展開される。辞書的意味と異なる。
二次的ことば、現実場面を離れたところで、自分と直接交渉のない不特
定多数の人たちや抽象化された聞き手一般に向けて、
一方的に伝達として行われる言語行動。
●計算能力の発達
生得的能力は4以上の数には適応してい。
→子どもはカウンティングという行為を通じて、数の理解を拡張。
・手指の計算→心的計算
Count_all=3+2のとき、+= (25
Count-on
3+2のとき、
+2=
手指の利用なし:頭の中で計算
◎知能の構造
ピアマン(2因子説]
一般知能因子 or 特殊因子
サーストン(多因子説]
言語理解、語の流暢々、数、空間、記憶、知覚速度、推論の7つ
キャッテ
一般因子と多数の知能因子の間に以下の2つを設定した。

ページ8:

/結晶性知能:過去の学習や経験によって蓄積された能力。
・流動性知能:頭の回転の速さや思考の柔軟さ。老化とともに衰退。
-CHC理論
キャッテル・ホーン・キャロルの理論が統合
・ガードナー[多重知能理論]
知能を属する文化において価値があると考えられている問題を解決した
り成果を想像したりする能力」と定義した。
ーターマン[IQ]
知能検査によって測定された精神年齢を生活年齢で割り、そ
れを100倍したもの。
-[偏差IQ]
知能検査を受けた人がそのときの同一年齢集団の中で相対的にど
こに位置づけられるのかを計算して知能指数を算出したもの。
第7回 感情と自己の発達
◎感情の機能
生物学的機能
感情が特定の問題に対処するのに最適な身体的準備や心理的
準備を整える役割。
社会的機能
感情が個体間でのコミュニケーションを進行させる役割。
◎感情の発達
-イザード[個別感情理論]
生得的に分化している基本感情が備わっており、文化を超えて普
遍的である。
―ブリッジェス
個体発生のプロセスに沿って徐々に様々な感情が構成されていく。
出生直後の新生児はただの興奮状態しか示さない。
―ルイス
新生児は生得的に原初的感情を備えている(充足興味苦痛)
生後3~6か月で、基本的な感情がみられる。
1歳半頃に自己意識が芽生え、照れ共感、羨望が現れる。
2歳以降、自己評価が可能になり、罪恥心誇りが現れる。

ページ9:

○感情知性
①感情制御 ②感情理解 ③ 思考の促進 ④感情の知覚
◎自己の理論と概念
ジェームズ
主我:主体としての自己
客我:対象(客体)としての自己
-自己意識
自らの存在に気づき、自分の行為や思考を客観的に省みること。
2歳頃に鏡映的自己を認識できるようになる。
ルージュテストで調べる。
自己制御
自分の欲求や行動を制御したり、自分の意思を主張したりする。
第8回社会性の発達
●社会性
人間関係を形成し、円滑に維持する能力。
―社会的認知:その場の状況や相手のふるまいをどのように理解するか。
社会的行動:その場の状況で相手に対してどう振る舞うか。
○道徳性
情緒的側面(フロイト):罪悪感・共感
行動的側面(バンデューラ):目の前にほしいものがあっても我慢する行動
困っている人がいたら助ける
認知的側面(ピアジェ):善悪の判断。規則の理解。
一コールバーグ(道徳的認知構造]
葛藤の認識→解決策としての道徳的原則
●向社会的行動
他者に利益をもたらす自発的行動。
of. 愛他的行動
他者の利益のために外的報酬を期待することなく、自発的意図的
になされる行動。
○実行機能
状況に応じて意識的に行動を切り替える能力。
DCCS課題で調べる。色・形・サイズ・数など2つの属性をもつカードを分類。

ページ10:

第9回友人関係の発達
親子関係
・心理的離乳 by ホリングワース・
・心理的分離 by ホフマン
機能的独立、態度的独立、感情的独立、葛藤的独立
仲間関係
●社会的視点取得
他者の思考や感情、視点を理解する能力。
o.社会的情報処理:他者理解や認知の仕方。
<児童期>
友人選択要因の変化
相互的近接→同情愛着→尊敬共鳴
ギャング・エイジ
小学校中~高学年の結束が強い同性集団
自己決定理論 [self-determination theory]
非動機づけ
外発的動機づけ
内発的動機づけ
<青年期 >
-仲間集団 ex)クリーク・クラウド
●「ふれ合い恐怖」
現代青年の内省の乏しさ、友人関係の深まり回避は「ふれ合い恐怖」と共
通と想定する。(岡田、1993)
1内在化された問題ex)スチューデント・アパシー、不登校・ひきこもり
・外在化された問題 ex) いじめ、非行
第10回アイデンティティの発達
/青年期 [adolescence]: 心理社会学的概念
思春期[puberty]:生物学的概念
周辺人[marginal wou] 大人でも子どもでもない。

ページ11:

◎自己概念
自己を客体として全体統合的に把握した概念。
・ジェームズ
・主我:Ⅰ [self as knower]
客我: me [self as known]
○アイデンティティ(自我同一性)
「自分は自分であり、他の誰でもなく、以前からもこれからも自分である」という意
識、及びその受容
アイデンティティ達成→アイデンティティ拡散
●時間的展望
ある一時点における個人の心理学的過去、および未来についての見解の総体。
多説ある。
/未来のみに限定する立場
認知だけでなく、感情や欲求も含める立場
アイデンティティ・スティタス(同一性地位)
/同一性達成
危機経験
関与している
モラトリアム
1
(途
しようとしている
+
早期完了
〃
している
同一性拡散:
"
未完
"
していない
-MAMAサイクル
達成と判断された青年が再びモラトリアムとなることもある。逆も然り。
・コミットメント
/コミットメント形成:自らが求める価値基準を見つけ、それに傾倒する。
・コミットメントへの同一化:コミットメント形成の中で、安心感や自信を得る。
性別
セックス:遺伝生理生物学的性別
ジェンダー:心理社会文化的性役割
・セクシュアリティ:性志向性性自認
第11回 恋愛関係の発達
◎成人アタッチメント
幼少期のアタッチメント→内的作業モデルに影響→大人のアタッチメント機能

ページ12:

第12回結婚と離別
●夫婦関係の問題
カスケード・モデル
関係の質の劣化
↓
不満
滝のように
連鎖的一段
階的に物事が生
じる様子を表す。
離婚を真剣に考える
別居→離婚
第13回 成人期
◎生涯発達心理学[life-span developmental psychology]
ライフサイクル論
誕生から死までの発達を包括的に捉える考え方。
●エピジェネティクス
DNA塩基配列の変化を伴わずに、細胞分裂後も継承されうる遺伝
子の発現制御と情報記憶のメカニズム。
●DOHaD仮説
胎児期や生後直後の健康状態が成人期の健康に影響を及ぼす。
◎はエリクソンの心理社会的課題
(成人初期:「親密性」
中年期
:「世代継承性」
第14回老年期
老年期 [senescence]=人口学的には65歳以降。
高齢者 [senior citizen]
・せん妄:意識障害のうちの1つで、知覚や認知の障害がある。
認知症:意識障害がないにもかかわらず、認知機能が低下する。
発達と記憶
・レシニッセンス・バンプ:どの年代でも青年期の出来事の想定が多い。

ページ13:

-フリン効果:IQテストスコアの大幅かつ長期的な上昇傾向。
実は流動性知能で生じている。
-記憶
自分の記憶に対する評価、あまり正しくない。
ポジティビティ効果:高齢者の記憶はポジティブに偏る。
●補償を伴う選択的最適化理論
不可避な能力低下を、能力発揮領域を選択することで、従来とは異なる代替
方略で補償すること。
○ソーシャルサポート
社会的ネットワークでやりとりされる種々の資源・援助。
ソーシャルコンボイ
ライフコースにおいて個人を取り巻きながらサポートを授受する社会的関係。
●エイジング・パラドクス
加齢に伴いネガティブ状況が増えるにもかかわらず、高齢者の幸福感
が低くない現象。
第15回 非定型発達
発達障害=非定型発達+社会的障壁

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