エ
じ
ア
か
オ
が
ロ
注意する暇がなかったのでしょう。彼6
で同じ調子で貫いていました。重くてのろい代わりに、とても客員
なことでは動かせないという感じを私に与えたのです。私の心は半
分その自白を聞いていながら、半分どうしようどうしようという念一
に絶えずかき乱されていましたから、細かい点になるとほとんど耳
へ入らないと同様でしたが、それでも彼の口に出す言葉の調子だけ
は強く胸に響きました。そのために私は前言った@苦痛ばかりでな
く、時には一種の恐ろしさを感ずるようになったのです。つまりQ
相手は自分より強いのだという恐怖の念がきざし始めたのです。
Kの話がひととおり済んだ時、@私はなんとも言うことができま
せんでした。こっちも彼の前に同じ意味の自白をしたものだろうか、
それとも打ち明けずにいるほうが得策だろうか、私はそんな利害を
考えて黙っていたのではありません。ただ何事も言えなかったので
す。また言う気にもならなかったのです。
昼飯の時、Kと私は向かい合わせに席を占めました。下女に給仕
をしてもらって、私はいつにないまずい飯を済ませました。二人は
食事中もほとんど口をききませんでした。奥さんとお嬢さんはいっ
帰るのだか分かりませんでした。
二人はめいめいの部屋に引き取ったぎり顔を合わせませんでし
た。Kの静かなことは朝と同じでした。私もじっと考え込んでいま
した。
ら
オK
それ
O
私は当然自分の心をKに打ち明けるべきはずだと思いました。し
かしEそれにはもう時機が遅れてしまったという気も起こりました。
なぜさっきKの言葉を遮って、こっちから逆襲しなかったのか、そ
こが非常な手抜かりのようにみえてきました。せめてKの後に続い
て、自分は自分の思うとおりをその場で話してしまったら、まだよ
かったろうにとも考えました。Kの自白に一段落がついた今となっ
て、こっちからまた同じことを切り出すのは、どう思案しても変で
した。@私はこの不自然に打ち勝つ方法を知らなかったのです。私
の頭は悔恨に揺られてぐらぐらしました。
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