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103. <明暗調節>
脊椎動物の網膜の模式図を図1に示す。 ヒトの
網膜においては,視細胞の数は, 神経節細胞の数
より 100倍ほど多い。 このことは,1つの神経節
細胞に多くの視細胞からの情報が伝達されること
を意味する。 1つの神経節細胞が何個の視細胞か
ら情報を受け取るのかは、網膜の場所によって変
わる。 網膜の中心部に存在する神経節細胞は,それ以外の場所に存在する神経節細胞と比
較すると,より少ない視細胞から情報を受け取っている。 したがって, 網膜の中心部に
存在する神経節細胞は,それ以外の場所のものと比較すると, 網膜上のより狭い領域にお
ける光の情報を脳に送ることになる。
図 1
眼に入る光の量は、瞳孔の大きさによっ
て調節されている。 明るい光環境下で網膜
が受容する光の量が増大すると, 瞳孔は縮
小し, 眼に入る光は減少する。 逆に, 暗い
光環境下では, 瞳孔は拡大し, 眼に入る光
は増大する。 これを瞳孔反射という。 野生
型マウスの網膜にさまざまな強度の光を照 0.0
射したときの瞳孔の大きさの変化を測定し
瞳孔の直径(最大値=1)
1.0
20.5-
色素細胞層
l
101
問2 (ア) (イ)b (ウ) 視細胞 ) 細胞 X
視細胞層
連絡細胞層
102
103
光の強度(相対値)
図2
103 解答
問1 網膜の中心部分でものを見た場合は、 視細胞が網膜の狭
い領域で受けとった光の情報を神経節細胞に伝えるため、
脳での解像度は高くなる。 中心部以外で見た場合は広い
領域で受けた情報を伝えるため解像度は低くなる。
104
神経節
細胞層
Thann
た結果を図2の曲線 a に示す。
近年、視細胞をもたない変異マウスが作製された。 網膜内で光を受容する細胞は視細胞
のみだとすると,この変異マウスでは瞳孔反射は起きないはずである。 ところがこの変
異マウスでも瞳孔反射が観測された。 先述の野生型の場合と同様に変異マウスの瞳孔反射
を測定した結果を,図2の曲線bに示す。この結果は、網膜の中に視細胞とは別の光受容
細胞(これを「細胞X」とする) が存在し, 瞳孔反射を引き起こすことを示している。
問1 下線部①のような事情により、網膜の中心部を用いてものを見た場合と, それ以外
の部分を用いて見た場合とでは, ものの見え方がどのように異なってくると考えられる
か。 理由も含めて100字以内で述べよ。
105
教科
容が
知ら