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南北問題北半球に偏
在する先進諸国と南半
球に偏在する開発途上
諸国との間の経済的格
差による政治的、経済
的諸問題。
その一つとして、南北問題が挙げられるでしょう。生物多様性を守るといって、
いちばん多様性の高いのは熱帯雨林とサンゴ礁で、どちらも熱帯、つまり南の開
発途上の国に多くあります。自然を開発して、なんとか経済的に豊かになろうと
いう南の国の希望を、生物多様性が減少するからだめだと、頭から押さえ込むわ
けにはいきません。南の国の人たちには生活がかかっています。それに対して、
北の国の人たちは、そもそも都会暮らしで、生物多様性の減少など、それほど身
「身につまされる話」
とは、ここではどうい
につまされる話ではなく、開発を諦めてもらう代償として、南の国にお金を支
うことか。
払ってまでも地球の生物多様性を守ろうという気持ちには、なかなかなれません。
南北問題のもう一つの側面が、生物多様性条約で問題にされています。この条
生物多様性条約地
上の多様な生物を生自
約の目的として、遺伝資源の利用から生じる利益を公正に配分するという項目が
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環境とともに保全し、
遺伝資源の持続的利田
を可能にし、更に、
物資源から得られる。
益を公正に配分する
となどを目的とする回
際条約。一九九二年加
択、翌年発効
あります。新しい薬が、珍しい生物から作られたとしましょう。作るのは北の国、
珍しい生物がすんでいるのは南の国と、相場が決まっています。その新薬から上一
がった利益は、製薬会社が独占せずに、生物の提供国である南の国にも分けよう
というのが、生物多様性条約の目的の一つです。これにアメリカが納得せず、ま
も
だこの条約を批准していません