次の文章を読んでふさわしい題名を考えて答えなさい。
たかつきせいき
麻布大学教授の高槻成紀は野生動物と人間の共存という視点で研究している。彼は原発事故と
野生動物について講演をしたことがあり、その中で、動物に蓄積された放射能の測定結果をもと
に、獣医師の現場から影響を鋭く警告した。
その後、日本哺乳類学会の溝口氏から「国際原子力機関とイノシシの調査をするので協力して
ほしい」と言われ、迷わず引き受けた。東北の阿武隈山系の自然の美しさをよく知っており、原
発事故直後から、何か貢献できないかと思っていたからだ。
食べ物と被ばくとの関係を調査した。チェルノブイリ事故データを調べると、イノシシの体内
被曝は年を追うごとに低下せず、上がった例もある。その理由は、現在、放射性物質が地下10セ
ンチのところまで浸透しているのだが、イノシシは、その地中 10センチに育つキノコを掘り返
して食べるからだ。日本でもイノシシの数値は上がる傾向にある。こうした調査を幅広くやれば、
環境への放射能物質の影響を予想する手がかりになる。
国際原子力機関の専門家会議が福島県であった。 動物の肉が食べられない。観察したり記録し
たりする調査の継続が必要―。 高槻は福島県の説明をきいて、どこか人間中心の身勝手さを感じ
た。
「動物を食べ物として見るだけではなく、人間が自然の破壊者だという視点が大切だ。その反
省の上で何を世界に発信するかを考えるべきだ」
目先の成果も大事だが、地球史的な長い目で記録を残す意味を確認しておきたかった。高槻は
「動物にとって、私たちは加害者なんです」と言った。
答