【練習問題】
次の文は、女流歌人伊勢の歌を中心とする作品の冒頭である。 読んであとの問いに答えよ。
甲 さぶ
いづれの御時にかありけむ。 大御息所と聞えける御つぼねに、大和に親ありける
らひけり。親いとかなしうして、
などもあはせざりけるを、大御息所の御せうと、年ご
3-
ろいひわたり給ひけれど、しばしはさらにきかざりけるを、いかがありけむ、思ひつきにけり。
いかにいはむとなげきわたりけるを、年ごろへにければ、聞きつけてけり。されど、す
くせこそはありけめとて、ことにいはざりけり。 ただ、若き 甲 は頼みがたきものをとぞい
ひけるほどに、時のおほいまうちぎみのむこにとられにけり。その折にぞ、親も、さればよと
きたり。 この女の家は
いひければ、 ハ はづかしと思ふほどに、この男のもとより
かき
五条わたりなるにきて、墻の紅葉に歌をなむかきつけける。
人すまず荒れたる宿をきてみれば今ぞ紅葉の錦おりける
女心うきものから、あはれにおぼえければ、
涙さへ時雨にそひてふるさとは紅葉の色もこさぞ増される
とて、紅葉につけてぞやりける。
いとをかしと思ひけり。
A
駅
ニ
今は我をばよもとはじと