生物
B 人類の移住などの影響を受け, 現在はオーストラリアのタスマニア島だけに生息
する大型の有袋類であるタスマニアデビル (図2) は, 伝染性のがん (疾患D) の脅
このがんは、タスマニアデビルが個体どうしで噛み合うことで, 傷口から入り込ん
ほぼ全領域に感染拡大を続け, 野生のタスマニアデビルの個体数は激減している。
威にさらされている。 疾患 D は, 1996年に最初に確認されてからタスマニア島の
だ他個体のがん細胞が, 免疫系の拒絶反応を受けることなく生着することで引き起
こされる。
伝染性のがんは, タスマニアデビルのほかは、 (c)イヌと海産の貝類(ムールガイ)
などのごくわずかな例しか知られていない。 疾患Dについては,その後の研究に
よって、疾患D を示す症例でがん細胞が同様の異常な染色体構成を示すことなど
から,このがん細胞がかつて存在した単一の雌個体の末梢神経系のシュワン細胞に
由来することも確認されている。
図 2