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第14章
植物の成長と環境応答
303.光受容体と光屈性■次の文章を読み,下の各問いに答えよ。
植物は,光の波長を識別することができる。 太陽光には赤色光と
遠赤色光が含まれており,赤色光/遠赤色光の光量比(R/FR)は約
1.2である。 一方,ある植物の木陰では, R/FR が0.13と大幅に減少
する。 このような木陰で起こる R/FR 値の減少は葉の細胞に含ま
れる(ア)という色素が遠赤色光より赤色光を多く吸収するため
である。 R/FR 値が低い環境で発芽した芽ばえは, 日なたで発芽し
た芽ばえよりも胚軸 (右図) が長く伸びる(徒長)。 この現象を避陰反
応と呼ぶ。
J
胚軸
図 植物の芽ばえ
発芽した芽ばえは避陰反応によって植物体の大きさを調節するだけではなく,光の方向
への成長をも調節する。 この現象は(イ)と呼ばれオーキシンが関与することがわかっ
ている。シロイヌナズナでは,胚軸で(イ)を示さない突然変異体が2種類発見され,
その一方はフォトトロピンと命名された青色光受容体の欠損突然変異体であった。もう一
方はA遺伝子の機能が失われたA遺伝子欠損突然変異体であった。 野生型の胚軸を暗所で
水平におくと,胚軸は重力方向とは反対方向に曲がる。このような実験を重力試験という。
A遺伝子欠損突然変異体の胚軸は重力試験で曲がらなかったが, フォトトロピン欠損突然
変異体の胚軸は野生型と同様に曲がった。 オーキシンを野生型芽ばえの胚軸片面に塗布す
ると, 塗布した側とは反対側に曲がる。 このような実験をオーキシン試験という。オーキ
シン試験でA遺伝子欠損突然変異体の胚軸は曲がらなかったが,フォトトロピン欠損突然
変異体の胚軸は野生型と同様に曲がった。
問1.文中の(ア), (イ)に適切な語を答えよ。も
問2.文章とダーウィン, ボイセン イェンセンやウェントが行った(イ)に関する実
験を念頭に,次の(A)~(E)から適切なものをすべて選び, 記号で答えよ。 適切な記述がな
い場合は, 「なし」 と記せ。
(A) フォトトロピン欠損突然変異体では(イ)をもたらすオーキシンの移動が起こら
ない。大き
(a) DOM] Y.SM
(B) オーキシンはフォトトロピンの活性を促進している。
(C) 重力で胚軸が曲がるしくみと(イ)には共通のしくみがある。
(D) A遺伝子の発現は(イ)をもたらすオーキシンの分解を促進する。
(E) A遺伝子はフォトトロピンの活性抑制に関与する。
問3.A遺伝子とフォトトロピン遺伝子の両方を失った二重突然変異体の胚軸で,重力試
験とオーキシン試験を行うとどのような結果が予想されるか。 それぞれ,「曲がる」か「曲
がらない」で答えよ。
(北海道大改題)
問2,3. A遺伝子欠損突然変異体は,オーキシン試験でも屈性を示さないことから,A遺伝子の発現によ
してはじめてオーキシンによる効果が現れると考えられる。