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セロトニン
えいびんか
sensitization
●鋭敏化 動物は有害な刺激を受けたとき, 別の弱い刺激に対しても防御反応が過敏
に現れることがある。 アメフラシの場合, 尾に強い刺激を与えると,弱いえら引っ込
め反射しか生じない刺激に対しても、大きな反射が生じるようになる。これを鋭敏化)
という。鋭敏化を引き起こす刺激を何度も与えると, 鋭敏化は長く持続する。
●脱慣れや鋭敏化が生じるしくみ アメフラシ
の尾を刺激して起こる脱慣れや短期の鋭敏化に
は、尾の刺激を伝える感覚ニューロンと水管
の刺激を伝える感覚ニューロンとの間の介在
ニューロンにおけるシナプス可塑性が関与して
いる。
介在ニューロンは, 神経伝達物質であるセロ
トニンを放出する(図56-1)。 セロトニンを受
容した感覚ニューロンでは, CAMP がつくられ、
CAMP は, タンパク質をリン酸化するプロテイ
16ンキナーゼ (PK) という酵素を活性化する。 ある
種のカリウムチャネルはPKによってリン酸化さ
れると閉じるため,K* の流出が減少して活動
電位の持続時間は長くなる。 その結果, 電位依
存性カルシウムチャネルの開く時間が長くなり
20 (図5-②) Ca2+が神経終末内に流入する量が
ふえる。 Ca2+の増加に伴ってシナプス小胞から
の神経伝達物質の放出量が増加し, 伝達効率が
高まって, 脱慣れや鋭敏化が起こる (図56-③)。
一方、長期の鋭敏化には新しいシナプスの形
2 成が伴う。くり返し与えられた刺激によって活
性化したPKは,核内に移動して調節タンパク
質をリン酸化する。 これによって, 新しいシナ
プスの形成に必要なタンパク質の遺伝子が発現
し、ニューロンの形態が変化して新しいシナプ
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介在
ニューロン
セロトニン 神経伝達物質
受容体
感覚ニューロン
一部のカリウム
チャネル
電位依存性カルシウム
チャネル
③
(リン酸化
閉じる
CAMP
活性化
PK
(開いている時
間が長くなる
Ca2+の流入量
(増加
「神経伝達物質
の放出量増加
④
スが形成される(図56-4)。 シナプスの数が増
新しいシナプスレ
加することによって反応がより起こりやすくな
り、長期の鋭敏化が起こる。
が形成される
図5 鋭敏化のしくみ
MOVIE
物の行動27