高村光太郎
レモン哀歌
そんなにもあなたはレモンを待つてゐた
s(geucと2)
かなしく白くあかるい死の床で
めたし
O
わえ大犯
わたしの手からとつた一つのレモンを
4あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ」
Tノ
5トパァズいろの香気が立つ
その数商の天のものなるレモンの汁は
ぱつとあなたの意識を正常にした一
8あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
6
g あなたの咽喉に嵐はあるが
正 かういふ命の瀬戸ぎはに
e 智恵子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にかたむけた
立 それからひと時
昔山顕でしたやうな深呼吸を一つして
s あなたの機関はそれなり止まつた
m 写真の前に挿した桜の花かげに
E すずしく光るレモンを今日も置かう