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1 酵母がエネルギーを産生するしくみに関する次の文章を読んで以下の設問に答えよ。
酵母(Saccharomyces cerevisiae) は、 周囲の環境に応じて呼吸や発酵を使い分けエネルギーを産生している。
解糖系で代謝できる炭素源(グルコースなど)が低濃度存在する条件ではパスツール効果という現象がみられ
る。一方、解糖系で代謝できる炭素源が豊富に存在する場合には, 好気条件であっても発酵でエネルギーをま
かなう。その後,解糖系で代謝できない炭素源 (エタノールなど)のみの栄養飢餓状態におかれると、エネルギ
一獲得の方法が発酵から呼吸に切り替わり, エタノールなどが呼吸基質となる。
②オートファジーは、自らの細胞質成分を分解しリサイクルするシステムであり,栄養飢餓に対する適応機
能のひとつである。 栄養飢餓に直面すると、細胞の活動を大きく変化させるため,細胞内では様々な生体分子
の作り換えをするが, オートファジーは自らの細胞質成分を分解することで速やかにその材料を供給するこ
とに働くと考えられる。 そこで, 炭素源としてグルコースが豊富に与えられた状態からエタノールのみの状態
におかれたときのエネルギー産生に対するオートファジーの役割を実験で調べてみよう。
(実験 1)
酵母のオートファジーに必須の遺伝子 atg2 を欠損した株の増殖を野生株と比較した。 酵母はグルコース添
加培地で前もって培養し, それらを一定量採取して新たな培地に入れて培養を開始した。 新たな培地としてグ
ルコースまたはエタノールを豊富に添加した培地を使用した結果, 図1のグラフが得られた。 培養は好気条
件で行っており、酵母をエタノール添加培地に移すことによってエネルギー産生方法が発酵から呼吸に切り
替わることを期待した。
細胞数
0
8
グルコース +
エタノール-
炭素源
グルコース
グルコース
エタノール
エタノール
0
24 48 72 96 120
時間(h)
グルコース-
エタノール+
24 48 72 96 120
時間 (h)
図 1 酵母増殖の時間経過
野生株は実線, atg2欠損株は破線で示した。 新たな培地で酵母の培養を開始した時点を0とした。
また、野生株ついて A増殖誘導期 (準備期), B増殖期, ©増殖停止期を矢印で示した。
(実験 2)
実験1と同様の培養条件で、 あるタンパク質の分解を指標にオートファジーの有無を調べたところ、表1の
結果が得られた。
表1 培養条件ごとのオートファジーの有無
培養条件
結果
オートファジーの有無
なし
し
「あり」
なし
株
野生株
atg2 欠損株
野生株
atg2欠損株
野生株
欠損株