II DNAの研究史において、 DNA の複製方法には、次の仮説1~3があった(図2)。
(c)
仮説 1 もとの2本鎖DNAはそのまま残り、新たな2本鎖DNAができる。
仮説2 もとの2本鎖DNAのそれぞれの鎖を鋳型にした2本鎖DNAができる。
仮説3 もとの2本鎖DNAはヌクレオチドがばらばらになり、もとのDNA鎖と新しい
DNA 鎖が混在した2本鎖DNAができる。 この仮説3では、親世代のヌクレオチ
ドが均等に(それぞれ50%ずつ) 複製後のDNA分子に伝わるものとする。
新たに複製された
もとのDNA鎖
DNA 鎖
||
I
FO
仮説1
仮説 2
仮説3
図2
メセルソンとスタールは、窒素原子に重さの異なるもの (通常の窒素原子と重い窒素原
子) が存在することを利用して, 次の手順1~3で仮説1~3を検証する実験を行った。
手順1重い窒素を含む培地で大腸菌を何世代も培養し、DNAに含まれる窒素がすべて
重い窒素に置き換わった大腸菌を得た。
手順2 手順1で得た大腸菌と, DNAに含まれる窒素がすべて通常の窒素である大腸菌
からDNAをそれぞれ抽出し, 抽出したDNAを遠心分離して, 2本鎖DNAの比
を調べた。その結果、図3のように、重い窒素のみからなるDNAは試験管の下
方に、通常の窒素のみからなるDNAは上方にバンドとして現れた(図3)。
手順3 手順1で得た大腸菌を、通常の窒素を含む培地で1回分裂させた。