2 Rh式血液型
A抗原やB抗原以外にも, 赤血球表面にはRb因子とよばれる抗原があり,
それをもつ人は Rh (+), もたない人は()とよばれる。 日本人では Rh
(-)は1%以下であるが,白人では Rh(-)が5%程度存在する。
ABO 式血液型とは異なり, Rh(-)の人は Rh因子に対する抗体をもともと
はもっていない。したがって, Rh(-)の人に Rh(+)の血液を輸血しても, 抗
体が産生されるには約1週間を要するため, 初回はなんの問題もおこらない。
しかし2回目に Rh(+)の血液を輸血すると,すでにつくられている抗体と反
応し,赤血球の凝集を生じてしまう。
さらに重要なのはRh(-)の女性が妊娠した場合である。 Rh(+)は Rh(-)
に対して優性であるため, 通常胎児は Rh(+) である(わが国では,父親も Rh
(-)であることはきわめてまれである)。胎児血と母体血はまじり合うことは
ないが,妊娠末期や分娩時に胎盤が子宮壁からはがれる際に, 微量の胎児血が
母体に入ることがある。つまり, 胎児の Rh(+)の血液が Rh(-)の母体に入る
ことになり,これによって母体にRH(+)に対する抗体が形成されることにな
血液型不適合妊娠>
る(>図3-47)。
A 08A
べんしゅつ
第1子は抗体が産生される前に娩出されてしまうため,まったくなんの問
題もおこらないが, 第2子が問題となる。 Rh(+)に対する抗体は反G 抗体で
あるため胎盤を通過でき, これが胎児に移行して胎児の赤血球を破壊する。こ
れにより胎児は溶血性貧血を生じ,重度の障害をおこしたり子宮内死亡動児
O
赤芽球症)をおこしたりする。