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研究のきっかけ
(中略)
クマゼミ増加の原因を探る1
一九六〇年代、大阪市に隣接する豊中市で少年時代を過ごした私に
とって、クマゼミは「セミの王様」だった。全長六、七センチメート
ルもある、銃口で黒光莉りのする体。羽化したての若い成虫には、金色
の毛が輝く。何よりも数が少なく、めったに捕ることができなかった。
しかし、いったん地元を離れ、一九八四年に再び戻ってきた私は、
クマゼミの声が以前よりよく聞こえることに気づいた。 職場のある大
阪市内はさらに顕著で、ほとんどクマゼミの声しか聞こえないほどに
なっていた。不思議に思った私は、当時学生だった森山実さんと、
二〇〇三年から六年間に及ぶ調査を行なった。
大阪市内では、なぜクマゼミの占める割合が、これほど高くなった
のだろうか。一九六〇年代からの主な変化として挙げられるのが、こ
の地域の都市化、気温上昇、湿度の低下である。 急速な都市化にとも
ない、植物や土で覆われた地面は舗装されてビルや道路になった。都
市化はヒートアイランド現象を引き起こす。一九六〇年代からの五十
年間で大阪市の年平均気温は約一度上昇し、湿度は十パーセント近く
低下した。つまり、現在の大阪市内は、以前より暑く、乾燥している。
クマゼミは、もともと西日本の温暖な地域に多く生息し、暑さには強
いと考えられる。ヒートアイランド現象による環境変化が有利に働い
たのではないだろうか。私たちは、この点について検証していくこと
にした。
※ヒートアイランド現象・ ・都市の気温が周囲よりも高くなる現象
◯問題提起と大きな仮説
問題提起
大きな仮説
大阪市内では、なぜクマゼミの占める割合が高くなったのか。
↓・大阪市内は以前より暑く、乾燥している。
↓・クマゼミはもともと温暖な気候に生息している。
ヒートアイランド現象による環境変化がクマゼミに有利に働
いたのではないか。一

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