約38億年前に誕生したと考えられる生物は非常にシンプルで、今の原核生物
に似たものだったのではないかと考えられている。 その後約20億年前に単細胞
の真核生物が、約10億年前に多細胞生物が生まれたと考えられている。発現制
御の高度化、タンパク質の多機能化がこれを実現した。
生物の遺伝情報はDNAの配列*として保存されている。DNAの配列は転写・翻
訳といった過程を経てタンパク質となる。タンパク質は酵素や受容体などとして
細胞内外で特定の機能をもって働く。
タンパク質がコード*されている配列を「遺伝子」と呼んでいる。ヒトは30億
塩基対 (base pair 以下bpとする) からなるDNAを持っている。このDNAには
約20.000個の遺伝子がコードされている。ヒトの遺伝子の長さは平均すると約
10.0005bpであることが知られている。 となると遺伝子がコードされている長さ
は20.000 x 10.000 bp = 2.0x108 bpとなる。これはDNA全体の1/4ほどであ
る。
多細胞生物において、すべての細胞の核にあるDNAは同じものであるが、す
べての細胞ですべての遺伝子が発現?*しているわけではない。例えば心筋では心
筋として働くための遺伝子だけが発現する。そのとき消化酵素の遺伝子や光の
受容体の遺伝子などは発現しない。このため、多細胞生物のある細胞を培養し
てもクローンを作ることはできない。この問題をクリアし、世界で初めて作成さ
れたクローンは羊のドリーと呼ばれる個体であった。このような技術はさまざ
まな医療分野・研究分野で期待されており、iPS細胞を角膜細胞へと変化させた
細胞シートをもちいた移植手術が大阪大学で行われたことは記憶に新しい。