「公共の福祉」による人権同士の調整のモデル
【ケース)
Y新聞に「衆議院議員Xが、建設会社Bより 500万円の金員を受け取るかわりに県の
発注する1億円の公共事業工事を受注できるよう便宜をはかった」という記事が掲載
された。衆議院議員Xは、記事の内容は虚偽であり自分の名誉を殿損するとして新聞
を発行するY新闘社に対して損害賠償を請求する訴訟を提起した
(人権同士の衝突の形)
マス·メディア (Y新聞社)
の表現の自由(憲法 21条)
本来「等価値」の憲法上の権利同士の衝突を 「公共の福祉」を使って調整する
衝突·矛盾
衆議院議員X
一
の名誉権(憲法13条)
(それではどのように調整するのか?)
表現の自由といっても絶対無制限のものではなく他者の権利を侵害するような表
現は法的に制限される。今回のケースでは他者の権利は衆議院議員Xの名誉権という
ことになるが、一方で名誉権についても絶対無制限のものではない。 例えば今回のケ
ースのような国会議員が「汚職」 をしている疑惑を報じた場合に、もしそれが真実で
あればそのような人間に国民の代表者である国会議員を務めさせることについて多
くの国民が疑問に思うだろう。このような国民の知るべき情報まで「名誉を傷つける」
という理由で損害賠償を支払う責任を負わせなければならないとするのはおかしい。
そこで現在裁判では、他者の名誉を傷つけるような事実を暴露したとしても、 ①暴
露した事実が、公共の利害に関係するものである場合に (公共性)、 ②暴露した動機
が公益に資することにあったときは (公益性)、③ 暴露した事実の真否を判断して真
実であるという証明が出来た場合には (真実性)、責任を負わない (正当な表現行為
であると認められる) という調整方法が採用されている。
つまり、訴えられたY新聞社側が①~③の要件を裁判の中で証明することができる
かどうかを「調整役」 の裁判官が判断するのである。
参照条文:憲法21条 憲法13条 民法 709条 刑法 230条 刑法230 条の2
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37条